「パンチの効いたメッセージはなかった」

後半国会では、年金改革関連法案、選択的夫婦別姓制度の導入、企業・団体献金の見直しなどをめぐる議論が始まっている。

自民党は3月9日に党大会を開き、石破首相肝いりの地方創生や防災庁の設置準備を重点政策に掲げた25年の運動方針を決定した。首相が演説で「国民一人ひとりに最も近い政党でありたい。もう一度原点に立ち返りたい」と党の立て直しを訴え、6月の都議選や7月の参院選に向け、「私も先頭に立ち、必ず勝ち抜く」との決意を述べた。

この演説について、総裁選を争った高市早苗前経済安全保障相は11日、自身のX(旧ツイッター)に「パンチの効いた政策メッセージは打ち出されなかった」と投稿した。小林鷹之元経済安保相も9日、記者団に「どういう国造りを目指していくか、発信していくことが重要だ。参院選に向け、そういうメッセージはあまり感じられなかった」との見解を示し、高額療養費制度見直しをめぐる政府・与党の迷走についても苦言を呈した。

高市早苗前経済安全保障相の2025年3月11日のXの投稿をキャプチャー
高市早苗前経済安全保障相の2025年3月11日のXの投稿をキャプチャー

10日の読売新聞は自民党大会に関連し、「党は少数与党、党員減少、党勢低迷の『三重苦』に直面し、首相の政権運営には批判の声が公然と上がり始めている」と報じた。

実際、少数与党に転落してから「石破カラー」は封印され、予算案審議などで野党の要求を次々とのまされている。党員は24年末現在102万人と前年から6万人減少した。内閣支持率は、3月のNHK世論調査(7~9日)で36%と前月より8ポイントも下落した。トランプ米大統領との首脳会談(2月7日)の予想外の「成功」で5ポイント上昇したが、その後の米国の関税攻勢を免れていないこともあって、元の水準に戻ったと言える。

「政治資金規正法に触れる可能性がある」

こうした世論を踏まえたのか、旧安倍派の西田昌司参院議員が3月12日、国会内での党参院議員総会で「参院選は今の体制のままでは全く戦えない。新たなリーダーを選び直さないといけない」と予算成立後の首相退陣を公然と求めた。総会後、新総裁候補として記者団に高市氏の名を挙げている。

石破首相の商品券問題を朝日新聞電子版が報じたのは13日夜だった。首相はその深夜、公邸で記者団に「会食のお土産代わり、家族へのねぎらいの観点からポケットマネーで用意した」と弁明した。個人から政治活動に関する政治家個人への寄付を禁止する政治資金規正法21条2項に触れることはないのかと問われ、首相は「政治活動に関する寄付ではない」と説明し、首相退陣を否定するなど、火消しに必死だった。

首相公邸での会食には、林芳正官房長官や衆参の官房副長官も参加していた。首相には新人議員の家族をねぎらいたい気持ちがあっただろうが、商品券を受け取った全員が返却したことからも「政治活動ではない」という強弁が通用するとは思われない。