私立共学の渋渋の今年の東大合格者数は50人で全国ベスト10入り。加えて、昨年は34人が海外の難関大学に合格するなど国内外で実績を伸ばしている。同校の校長・高際伊都子さんが、神奈川県トップ高・聖光学院高校の校長・工藤誠一さんとの対談で「これからの社会で活躍する子に必要なもの」を語った――。(後編/全2回)

※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。

前編はこちらから。

聖光に1500人収容コンサートホール、渋渋は敷地に現代アート美術館

【工藤誠一:聖光学院中学校高等学校校長(以下、工藤)】本当にネットワークは広がっているようです。SNSの発達のプラス面ですね。感性を育むという意味では、うちは芸術教育にも力を入れています。まあ、私の趣味でもあるんですが(笑)。スタインウェイのグランドピアノがある約1500人収容できる本格的なコンサートホールがありまして、音楽系の部活に入っていなくても演奏会ができます。ピアノは学内のあちこちに置いてあって、生徒は自由に弾いています。音楽だけじゃなく、陶芸の窯も二つありますよ。

【高際伊都子:渋谷教育学園渋谷中学高等学校校長(以下、高際)】素晴らしい! 本校も学校に隣接していたブリティッシュ・スクール・イン・東京が移転した跡地に、現代アートの「UESHIMA MUSEUM」を誘致しました。見学ツアーを開催したり、授業の一環として見に行ったり、いつでも使える約束になっているんです。

高際伊都子先生
撮影=市来朋久

【工藤】学校の隣に美術館というのも贅沢ぜいたくな環境だ。

【高際】積極的でチャレンジ精神旺盛な生徒もいますが、興味や関心が薄い生徒もいます。そういう生徒には、美術館もそうですが、外部の方に来ていただく講演など、「面白いから行ってみない?」と声をかけるようにしています。まだ興味は持てなくても、「中学生のときに見たことがあるな」という程度でも頭のどこかに残っていることが大事だと思うのです。そういう意味でやはりきっかけづくり、機会を提供することは大切だと思います。渋渋には、バイオリンなど予備の楽器も用意していて、ちょっとやってみたいなあと思ったときに、気軽に“お試し演奏体験”ができるよう工夫していますね。

【工藤】機会提供の場というのはいいですね。楽器は高額なので、「やってみたい」と思ってもハードルが高いし。大人になったら、そんな環境はありません。同じような意味で、うちでは宿泊行事も大事にしていて、どの学年にも必ずあります。学校が所有している長野県の斑尾まだらおキャンプ場に行ったり、冬季にはスキー教室を開いたり。仲間とともに自然の中で過ごすというのが大事ですね。「ありが/ちょうの羽をひいて行く/ああ/ヨットのやうだ」という三好達治の詩がありますが、大人になるとそういう感性というのは、なかなか出てきませんが、中高生の子供は、自然の中に放り込むとパッと出てくる。面白いよね。

【高際】学校行事は本当に大事ですよね。うちには残念ながらキャンプ場はないので、あちこちに出かける宿泊行事を大切にしています。生徒たちが自分たちで見学先を見つけることになっています。伝統工芸の体験工房を見つけてきて参加する生徒もいます。「体験だけでなく、近くにいるいろんな大人にインタビューしてくれば?」と勧めると、農家の方にインタビューして、トウモロコシをお土産にもらってきたり、宮大工さんに木材の組み方を教わって感動してみたり。

【工藤】いいですね。

【高際】本当に。ただ、体験はなかなか難しいらしく、三輪そうめんの工房で生徒が作ったのは、稲庭うどんよりも太かったりします(笑)。でも、何かに挑戦して、うまくいかないという体験こそが、本当は大事なんだと思います。

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