生成AIが何でも答えてくれるなら、自分の脳を鍛える必要はないのか。2人の娘がいる脳研究者の池谷裕二さんは「生成AIが回答した内容や表現が正しいか判断するためにも自分の脳を鍛える必要がある。ただ、親ができるのは子供の内発的なモチベーションを刺激してあげることだ」という――。(後編/全2回)

※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。

笑顔の接写
写真=iStock.com/Thai Liang Lim
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もう漢字や英語を覚えなくてもいい?

生成AIに聞けば何でも答えてくれるのだったら、自分の脳を鍛える必要はないと思うかもしれません。コツコツ覚える勉強はもういらないのかというと、それは違う。毎日少しずつ練習する学びはこれからも必要です。生成AIがあるから漢字を覚えなくていいよ、英単語を知らなくてもいいよ、ということにはなりません。

自分の頭のなかに知識があることと、インターネット上に知識があることとはまったく別です。勉強や仕事を生成AIにやらせて頭を使わなくなったら、AIに使われる側になってしまうでしょう。生成AIを利用しつつも基礎的なスキルの学習を怠らないことが肝心です。

うちの研究室では、論文を書くときに、海外の論文を生成AIに翻訳させて読むことも許しています。一方で、毎日1本、原著論文を英語で読むことを義務付けています。論文の書き方を身につけたり、原著論文ではどんなことが書いてあるのかを学ぶには、自分の頭を使って苦労して読み込むことが欠かせないのです。

毎日の学習効果は比例の直線状ではなく、指数関数的に上がっていきます。最初はゆっくりでも、勉強を続けて「勘」をつかむと長足の進歩を遂げます。学生たちも、毎日続けるうちに読むスピードも速くなり、英語力も上がっていくのです。

生成AIで論文を出力させても、内容や表現が正しいか判断できないのでは通用しません。同時通訳してくれるAIができても、その表現が自分の意図通りかわからなければまずいでしょう。だから、学び続けることが変わらず大事なのです。

むしろ、これからは、楽をしようと思えばできるようになるので、学ぶ人とズルをする人とで学力の差が拡大するでしょう。

うちの研究室の学生は、従来は原著論文を1日1本読むだけで精いっぱいだったのが、今は生成AIの力を借りて周辺論文についても調べるようになり、学びの幅が広がっています。

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