黒木 亮(くろき・りょう)
1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学大学院修士。都市銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務。2000年に『トップ・レフト』で作家デビューし、『巨大投資銀行』『エネルギー』『排出権商人』『トリプルA』『赤い三日月』などの作品がある。早大競走部時代、箱根駅伝に出場。

「亡くなって46年が経つ今も従業員たちに慕われ、ともに働いたことを誇りに思わせる経営者というのは、いったいどういう人物だったのだろう?」黒木亮さんの最新の著作は、素朴な疑問から出発した。

「書いていて涙が出そうになるのは、しょっちゅうでした」思い出深い場面は、昭和20年6月に、神戸の川崎製鉄の工場が米軍の徹底した攻撃にあった翌日のシーン。瓦礫が散乱し、煙がくすぶる工場で、西山弥太郎(川崎製鉄初代社長)は、「もし占領されても、敵はこの優秀な工場を廃物にはすまい。いずれ誰かの手で工場を動かす日がくるだろう。それを我々の手でやろう」と、自分の胸にすがって男泣きするベテラン工員を励ました。

「西山弥太郎さんは、松下幸之助、盛田昭夫、本田宗一郎クラスの大物経営者ですが、自分を誇ったり、語ったりするのが嫌いで、勲章さえ辞退しようとしたほどです」それゆえこれまで鉄鋼業界以外では知られずにきたという。

(萩原美寛=撮影)
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