渡辺康幸(早稲田大学競走部駅伝監督)
いつも温厚、かつ快活である。サービス精神も旺盛。2013年1月2、3日に行われる東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の会見で、早大の渡辺康幸監督は「打倒! 東洋大」を胸にこう、言った。
「今回は4年間君臨し続けた“怪獣”こと柏原(竜二)くんがいなくなり、ちょっとさみしい山登りになると思われているかもしれませんが、うちは小さい怪獣ぐらいの出現を期待しています。東洋大さんに(前回の)借金を返していかないといけない。1年ずつコツコツとローンを返すのと一緒で、1年間で2分ぐらいずつ借金を返済していきたいなと」
小さい怪獣と形容したのは、前回の箱根駅伝5区で1年生ながら区間3位と好走した山本修平(2年)だろう。もうひとりのエースが大迫傑(3年)。東洋大の「山の神」、柏原が卒業した今回、早大は序盤で流れに乗り、山登りの5区で勝負をかける。
連覇を狙った前回は総合順位で4位に沈んだ。優勝が東洋大、2位は駒澤大だった。この2校と比べると、層の厚さでは劣るかもしれないが、早大は充実した伝統の練習に自信をのぞかせる。
「この11月、12月の集中練習を確実にこなせば、百発百中で走れるという練習スケジュールがある。その練習を100%出せれば、絶対、箱根駅伝での快走が待っているのです」
渡辺は現役時代、早大のエースとして箱根路で大活躍を見せた。現役引退後、指導者となり、低迷する早大競走部長距離部門の育成に取り組んだ。2004年、コーチから監督に就任。科学的なトレーニングと情熱あふれる指導で名門を復活させた。
39歳。選手とのコミュニケーションを密に図り、からだのケアにも注意する。この時期、風邪やノロウイルスが大敵となる。箱根駅伝には、きっちりと練習を積めている選手を16人エントリーした。
箱根駅伝は選手にとって、特別な舞台である。とくに4年生にはこう、声をかける。「最後の箱根駅伝。二度とこの1年は返ってこないよ」と。