村田諒太(ロンドン五輪ボクシング金メダリスト)
ロンドン五輪で一躍、国民的ヒーローとなった。ボクシングのミドル級の金メダリスト。ボクシングの強さはもちろんだが、精悍な顔立ちとカラリとした性格、颯爽としたイメージで好感度が抜群である。
年末、年始とテレビやイベントに引っ張りだこだった。年末の「競輪グランプリ」のイベントにもゲストで登場した。世界選手権10連覇の元競輪選手、中野浩一さんとのトークで、「勝つコツ」を聞かれた。どうやって勝利の重圧に打ち勝つのか、と。
「あれば、僕が教えてほしいですよ」と、村田は周囲を笑わせた。
「勝とう勝とうと意識するとどうしても緊張してしまう。だから、勝つことに焦点を合わせずに、勝つために何をするかということに焦点を合わせるのです。準備というか、試合において何をするかということを必死で考えていたので、緊張感はさほど、ありませんでした」
ロンドン五輪の決勝戦は競り合いとなった。下馬評では、ブラジルのエスキバ・ファルカン有利とされていた。だが村田は立ち上がりから攻めていく。第1ラウンドを村田、第2ラウンドをファルカンがとり、第3ラウンドではファルカンのホールディングで村田に2ポイントが転がり込んだ。
日本人選手によるボクシングの金メダルは48年ぶりの快挙となった。ジャッジ、運を味方につけての勝利だった。運も実力の内とよく言われる。「幸運の引き寄せ方は?」と聞かれると、村田は即答した。
「やはりポジティブさですね。ネガティブに考えると、何も生まれない。ポジティブに考えていけば、運もやってきます」
奈良市出身の27歳。182センチ、77キロ。東洋大の職員として働く。ロンドン五輪後、多額の契約金を提示されながらプロのジムの誘いを断った。「アマチュア」という言葉を嫌い、プロではない立場に誇りを持っている。
現役を続けるかどうかは、まだ分からない。日本オリンピック委員会(JOC)のスポーツ指導者海外研修員として英国などに留学したい意向も持っている。ロンドン五輪のあと、改めて「スポーツの力」を実感した。2020年東京五輪パラリンピック招致の成功を願っている。
「なぜかというと、長野(冬季五輪=1998年)でアイスホッケーを見たからです。ものすごい盛り上がりだった。みんなで応援し、ひとつになれた。勝利に感動したからではなくて、頑張っている姿を間近に見て感動したからです。そういう場面に一緒に体験できるから感動できたのです」
日本で五輪が開かれれば、再び、活気づくことになるだろう。
「日本は元気がないといわれるけれど、じゃ、何が力になるのだ、と思う。スポーツです。スポーツの力って大きいんです」