中嶋則文(パナソニックラグビー部監督)
物静かなタイプ。選手を怒鳴ることもない。どちらかといえば、地味な監督である。でも選手の力を引き出す能力に長ける。「選手の挑戦を最大限尊重したい」とよく口にする。
大阪・淀川工高—日体大と進み、三洋電機(現パナソニック)に入社した。堅実なFB(フルバック)だった。現役引退後、コーチとなり、昨年、監督に昇格した。37歳。「チームワーク」をチームづくりの第一におく。
だがパナソニックは愛称の「ワイルドナイツ(野武士軍団)」の通り、個性派が並んでいる。社員契約ではない、プロ契約選手も多い。ただいま、日本代表のHO(フッカー)堀江翔太、SH(スクラムハーフ)田中史朗はニュージーランドのクラブに挑戦し、新加入のスター外国人、オールブラックス(NZ代表)のソニービル・ウィリアムズはプロボクシングもやっている。
さらにはエースWTB(ウィングスリークォーターバック)の山田章仁である。春からチームを離れ、アメリカンフットボールの日本社会人Xリーグ「ノジマ相模原ライズ」のメンバーとなった。つまりは二刀流。アメフトの公式戦にも出場した。
「最初聞いた時、わたし自身もびっくりした」と苦笑する。「でも堀江と田中が海外のラグビーに挑戦している。スポーツの形態が違うだけで、山田の挑戦も同じこと。選手のほうも全員は受け入れてないと思うけれど、頑張れよと言って送りだしている」
その代わり、チームには絶対、迷惑をかけるなと言明している。ラグビーは報酬があるが、アメフトは無報酬。練習、試合すべてにラグビー優先となっている。
特に怖いのが、アメフトでのケガである。キックオフのリターナー(相手キックを捕球する際に登場するRB=ランニングバック)という出場機会の少ないポジションながら、接触のダメージは大きい。「ケガだけはせんと、無事に帰ってきてくれ」と声をかけている。
「彼自身、アメフトでスペース感覚や周りがよく見えるようになっているようだ。人気面でもラグビーのプラスになる。でもラグビーで結果を出さないと、アメフトは認めない。もしプライベート(のアメフト)でケガをしたら、厳しく対応します」