日馬富士(大相撲第七十代横綱)

日馬富士 公平(はるまふじ・こうへい)
第七十代横綱。伊勢ヶ濱部屋。モンゴル出身。本名はダワーニャム・ビャンバドルジ。1984(昭和59)年生まれ。身長186センチ。幕内優勝4回。得意技は右四つ、寄り。

ついに最高位の横綱に昇進した。2001年1月場所に初土俵を踏んでから苦節12年、70場所目。「真っ向勝負」をモットーに全力で相撲をとってきた。横綱の伝達式の口上では、大関昇進の時と同様の四文字熟語を口にした。

「横綱を自覚し、全身全霊で相撲道に精進します」

10月3日。東京・江東区の伊勢ヶ浜部屋。稽古場は朝から活気が満ちていた。横綱に昇進してから初の稽古。入念にしこを踏んだ後、ぶつかり稽古で軽く汗を流していく。

横綱昇進に伴う行事に精神的に疲れていたのだろう、「しこを踏んで気持ちよかった」と言葉に充実感を漂わせた。母国モンゴルに帰国する余裕もなく、週末からは秋巡業に回った。あくまで稽古優先である。

「巡業に対しては今まで通り。時間の許す限り、ファンサービスもして、(大相撲界を)盛り上げていきたい」

16歳の時、モンゴルから日本にやってきた。入門当初、体重は80キロほどしかなかった。でも気の強さは天下一品。きびしい稽古にも歯を食いしばり、格上の力士に向かっていった。とくに同じ年に初土俵を踏んだ横綱白鵬へのライバル心はおおきかった。昨年12月、腸の腫瘍摘出の手術をおこない、体調がよくなった。体重が自己最高の133キロ。2場所連続の全勝優勝で角界の最高位に上りつめた。

大相撲界は八百長問題などの不祥事で人気の低迷が続いている。九州場所では久しぶりに東西に横綱が並ぶことで、人気復活の期待がかかる。しこ名には、太陽のように相撲界に「日」を照らしてほしいという願いが込められている。

新横綱は言うのだ。「ファンに感動と勇気を与えることが(横綱の)役目です」と。

(フォート・キシモト=写真)
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