大規模な海外M&Aから国内重視へとシフトするキリングループ。13年1月に発足する中間持ち株会社であり、国内飲料を統括する「キリン」社長も兼務する磯崎功典キリンビール社長に、国内を中心に今後の戦略を聞いた。
――あまり例がない中間持ち株会社のキリンは、これから何を狙っていくのか。
【磯崎】キリンビールだけではなく、清涼飲料のキリンビバレッジ、そしてワイン大手メルシャンの3社をぶら下げるのがキリンだ。3社はかつて上場していたが、いまはキリンホールディングス(HD)の傘下にある。市場が右肩上がりに成長しているときなら、3社が独自に事業展開しても発展するだろう。しかし、いまは少子高齢化で市場の縮小が続いている。それだけに、3社が一体となって知恵を出し合えるような組織力が、これからは求められていく。
2012年はキリンビバレッジが発売したトクホ(特定保健用食品)コーラ「キリンメッツ コーラ」がヒットした。ワクワクする商品を継続して世に出していくためには、3社の研究開発や商品企画を1つに統合し、ものづくりの総合力を上げる必要がある。トクホコーラや(2009年発売の)ノンアルコールのビールテイスト飲料に代表される市場創造型商品をこれからも出していきたい。
――13年春には本社も中野に移転するが、メリットはあるのか。
【磯崎】キリンHD、キリン、そして事業会社3社の本社機能は、すべて中野に集約する。約2500人の社員が中野本社に働き、キリンHDの新川本社(中央区)、キリンビールの原宿本社などは売却する。京橋のメルシャンを含めてこれまで都内に点在していたのが1つになり、コミュニケーションは格段にやりやすくなる。国内の総合飲料戦略にも弾みがつくはずだ。そもそも、組織力の原点とは、コミュニケーション力にあるのだから。
中野新本社は旧警察大学校の跡地であり、早稲田大学、明治大学、帝京平成大学も進出する。サブカルチャーの街と言われる中野だが、ビジネスマンや学生で賑わっていくだろう。