――中国はどうするのか。また、市場が縮小している発泡酒は続けるのか。

【磯崎】反日デモなどから日系の自動車や流通などは大変だった。当社は、ビールを珠海で製造しているが、地方政府との関係は良好で、影響はほとんどない。飲料に関しては、華潤と協調してやっていく。ビールについては、華潤は英SABミラーとやっているので、キリンと一緒にやることはありえない。また、日本市場での発泡酒はやり続ける。根強い支持があるためだが、何より国内市場はキリンにとって重要だ。

――この10月、中期経営計画を発表した。だが、キリンが最後に中計を達成したのは、1987年より前。キリンの最大の問題は、自分たちがつくった計画を達成できないことでは。

【磯崎】計画未達のとき、出ていく費用をどうするかなど経営力がポイントとなる。もちろん、長丁場の経営のなかで人材を育成して活用していくことが重要になる。

――具体的に、社員に対してどんな訴えをしているのか。

【磯崎】失敗を恐れるな、加点主義でいこう、ということと実はもう1つ。「皆さんは会社が潰れないという前提で働いていませんか。会社は潰れるものです。形があるものだから」と対話集会では話している。イーストマン・コダック、ゼネラル・モーターズ、日本航空など、かつての優良企業が現実に破綻した。バドワイザーのアンハイザー・ブッシュにしてもインベブに買収されて、いまはない。絶対に潰れないという公務員のような発想ではダメで、みんなで潰れないように頑張っていかなければならない。「(トップからそんな話を)初めて聞きました」と答える社員は多い。私自身はホテルなど、いつ潰れても不思議でない会社にいて、瀬戸際の経験から訴えているのだが。

※すべて雑誌掲載当時

(武島 亨=撮影)
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