2012年11月30日、国土交通省は2013年3月から増える羽田空港の国内線発着枠について、航空各社に対する配分を発表した。
発着枠の配分については、公平性・透明性を確保するために、7月から10人の有識者によって開かれた場で議論されてきた。過去、増枠分は日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)に同程度の数が割り当てられていたが、今回は増枠25のうち、JAL3枠に対し、ANAは8枠。ANA傘下にあるとされる新規航空会社の獲得分を含めると、実質的に計18枠を獲得した。関わった有識者の間からは「何のための議論だったのか」と非難の声があがっている。
過去4回の会議では、どちらかに配分を偏らせるような議論にはなっていなかった。問題は最終5回目の会議(11月19日)。国交省から突如「破綻企業が公的支援を受けていた期間は評価の対象から外す」との提案がなされた。
「会議の席上、有識者から次々と『聞いていない』『賛成できない』との声があがりました。会議の終わりで座長が『どなたか国交省の案に賛成の人はいますか?』と挙手を求めたのですが、誰一人として手を挙げた有識者はいませんでした」(会議に参加した有識者)
ところがいざ蓋を開けてみると、有識者の意に反し、JALが公的支援を受けていた期間の評価がゼロとなった。つまり、JALとANAで年間100億~150億円もの売り上げの差が生じることとなった。背景には、民主党政権下の唯一の成果といわれる劇的なJAL再生を潰したい自民党が、「公的支援を受けたJALと、(受けていない)ANAとの競争は不平等である」というANAの意見に乗ったのだ。国交省は、当初はその主張を受け流していたが、自民党が次期与党になることが確実視されたことで態度を翻して全面的にその意向を汲み、結論ありきで会議を開催したと見られている。
過去のJALの破綻は、自民党が地元への利益誘導のために国交省を介し、経営に口を出したことが一因だ。このような歪みに歪みを重ねるような前時代的な裁量行政は、もう終わりにして、政権交代と合わせ未来志向で航空業界の発展を目指すべきであろう。