JALがV字型回復を果たした。稲盛式経営の特徴である、「フィロソフィー」と「アメーバ経営」は低価格航空会社との競争においても貢献していると筆者は説く。

ファーストクラスのない便が増えた理由

JALの再生が完了したようだ。何を基準に会社の再生が完了したといえるのかを具体的に定義することは難しい。だが、JALの利益を見る限り、再生は終わったといってもよいだろう。再生初年度である2010年度に赤字は解消され、地震と津波、それに原発事故で内外の旅客が減るという厳しい環境下にあった昨年度でも高水準の利益が出ている。まさにV字型回復だ。再上場も予定されている。株主に大きな迷惑をかけた企業が再上場するのはいかがなものかという気の早い議論も戦わされている。

稲盛和夫氏の企業再建は、2つの柱によって支えられている。1つの柱は理念主義的経営である。フィロソフィーを確立することによって会社の目的を明確化し、従業員の仕事に取り組む姿勢を強化することができたのは、稲盛氏の理念主義経営が功を奏したからだと見ることができる。京セラと同じように、企業の目的は従業員の物心両面の幸福を追求することとされた。もう1つの柱は合理主義の経営である。利益数字を見て、合理的な経営を行うアメーバ経営である。この2つがお互いに支えあって効果を発揮したというべきかもしれない。理念主義だけだと、気持ちが空回りしてしまう可能性がある。アメーバだけだと、会社の空気がすさんでしまう。今回の再生の成功で、稲盛式経営は、製造業や通信産業だけでなく、航空産業にも成り立つことが実証されたともいえる。