憲法改正、自衛隊の国防軍化、集団自衛権の行使容認を公約に掲げ、総選挙で自民党が圧勝したことについて、一部マスコミやネット上などで「右傾化」を懸念する声が挙がっている。
朝日新聞は選挙前の紙面でたびたび安倍自民党の「右傾化」に言及。また女性週刊誌「女性自身」も、「安倍自民党が公約に掲げた『国防軍』にママたち、おばあちゃんたちが猛反発」という特集記事を掲載。ネット上でも「自民党の憲法草案がヤバイ」といった意見が飛び交っている。
また、関東在住のある男性はフェイスブックで、自民党の「日本国憲法改正草案」から憲法第18条の「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」という表現が丸ごと削除されていると指摘、「徴兵制が可能になる」と危惧している。この記述は5000人以上がシェア。似たような不安を感じている人が少なからずいることも窺える。
だが安倍氏周辺は「意図的な右傾化のレッテル張りだ」と反論する。「自民党の憲法改正草案から『奴隷的拘束を受けない』が削除されているのは、犯罪による処罰を除き、現在の日本において奴隷的拘束といった状態がありえないからだ」。
徴兵制についても、自衛隊幹部は「ハイテク戦争の時代に、徴兵制で素人を集めてもハイテク兵器を使えないから役に立たない」と首をひねる。
「確かに憲法改正は安倍氏の持論だが、安倍氏自身は『憲法改正は針の穴を通すぐらい難しい』と常々言っている。そもそも憲法96条は、憲法改正には両院の国会議員の3分の2の発議と国民の過半数の賛成が必要と定めている。衆院はともかく、自民党が少数の参院で憲法改正が発議されることは現実問題としてありえない」(安倍氏周辺)
安倍氏は12月17日の記者会見でも、参院の現状に触れ、憲法改正ができる状況にないと発言している。
「右翼や左翼は安倍政権誕生で明日にも憲法改正が実現するかのように騒いでいるが、安倍政権では憲法九条どころか96条の改正すらできないだろう。前の安倍政権当時の参院選で自民党は大敗。来夏の参院選で、一部の落選議員が復活しそうだが、衆院選の勝ちすぎの反動で議席増はわずかに留まる見込み。参院で自民が3分の2を取るなんて、とてもとても」(全国紙政治部デスク)