9月19日、日本航空(JAL)が再上場した。昨年度の営業利益は過去最高を記録。大規模なリストラで財務体質を改善し、経営破綻から2年7カ月でここまで漕ぎ着けた。

JALの再上場は全日空(ANA)へ影響を与えるのか。結論から言えば、短期的な影響はあまりない。資金調達に関しても、ANAはJALの再上場を見据えて7月に公募増資を行っている。

むしろ、競争が激しくなるのはこれからだ。リストラを終えたJALは、サービスを拡充する動きを見せている。国際線用ボーイング777機のシートをすべて刷新することを発表したのもその1つ。顧客満足でANAに追随する。

ANAがふたたび引き離すには、コスト削減を拡大すること。そして、JALより売り上げを伸ばすことだ。

これまでANAのコスト削減は功を奏している。同社はチケットレスで搭乗できる「SKiPサービス」を展開しているが、こうしたIT投資が人件費の削減に大きく寄与している。機材数を減らす取り組みもJALに先行してきた。賞与については、今後、増額するJALに対し、ANAは賞与抑制を継続し、コスト削減を深化させる可能性もあろう。

ANAは中期経営計画で2014年度までに累計1000億円のコスト削減計画を掲げている。12年3月期では同社も最高益を達成しているが、コスト削減への取り組みに抜かりはない。

売り上げについてはどうか。ポイントは2つある。

1つは国際線の強化だ。両社とも燃費効率の高いボーイング787を導入し、この中型機を軸に路線の拡大を目指している。ANAは世界最大の航空会社連合であるスターアライアンスに加盟しており、世界中に効率的なネットワークを構築しやすい。

もう1つは格安航空会社(LCC)の活用である。ANAは子会社としてエアアジア・ジャパンを有し、グループ全体としてアジア需要の取り込みを狙う。一方のJALはジェットスター・ジャパンに出資しているものの、一定の距離を保ち、従来のプレミアムブランドを維持したいというスタンスだ。今後、拡大が見込まれるアジア市場において、グループ一体でシェア拡大を図るANAの戦略が奏功するのではないだろうか。

(構成=プレジデント編集部)
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