「スマホを見ながら就寝」は睡眠に悪影響なのか

「眠気がなぜ発生するのか」について具体的に掘り下げ、メソッドにしたのは私しかいません。

突然ですが、皆さんはATPという物質をご存知でしょうか。

私たちの身体を動かすエネルギー源は、アデノシン三リン酸(ATP)が、リン酸と離れるときに大量に発生する物質です(ATP産生)。

このATP産生時に発生する残りカス(最終代謝物)が、脳内に溜まり眠気が発生することが、アメリカの睡眠医学の父といわれるウィリアム=C=デメント博士によって突き止められています。この残りカスが、アデノシンというものです。

ただ、眠気の発生要因はこれだけではなく、アデノシンはあくまで「眠気」が起きる原因の一つでしかありません。

眠気が発生する現象は、科学では収まりきれない広義的なものであり、20数個ほどの発生要因に伴って誘発されます。

もし科学的な論拠だけしか信じられない人は、普段自身が眠気に対して感じている感覚も信じられなくなってしまうでしょう。

例えば、ブルーライトや非常に明るい光を目に受けると、睡眠の質が悪くなるという話がありますが、強い光で発生するものはメラトニンであり、メラトニンの役割は、体内時計の修正です。

これは、睡眠の質に直接的に関係するものではありませんが、悪影響を及ぼす可能性も示唆されています。

メラトニンが発生するためには、2500ルクスという非常に強い光が必要です。

光の強さは、コンビニの照明で1000ルクス、部屋の照明で500ルクスほど。スマートフォンにいたっては、最高でも300ルクスに満たないのです。

しかもこの数字は、画面や照明など光源自体の数値で、光源から離れれば離れるほど数値は低くなります。30センチも離れれば、目に届く光の強さは30ルクス以下になるのです。

実際、スマートフォンを触っている途中で眠ってしまったり、テレビをつけっ放しで眠ってしまったりすることからも、ブルーライトや強い光がメラトニンを発生させ、睡眠に悪影響を与えるとは考えづらいのです。

映画館やレイトショーでは、非常に強い眠気が誘発されます。

この眠気は、テレビやスマートフォンを見ている状態で発生する眠気と同じタイプのものです。暗い空間で光を見ることが安心感に繋がり、眠気が誘発されて、気づけば眠ってしまっているのです。

また、眠気を除去するホルモン、オレキシンの減少が、眠気の発生の理由になっている場合もあります。

オレキシンは、眠気を除去する性質があり、空腹のときに最も発生します。

ですから、お腹を満たすたびにオレキシンの分泌量が下がるため、満腹になると極度の眠気が発生することに繋がるのです。

加えて、四肢の血液が胃や腸に巡ることも眠気の発生理由となります。

このように、睡眠不足だけでなく、さまざまな要因で眠気が発生するため、それぞれの眠気に合った対応が必要となります。

ベッドの上のスマホと、頭まで布団をかぶって寝ている人
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです

「眠気があるのは睡眠不足だから」のウソ

「眠気」は、社会生活を送る上で致命的なエラーになりかねません。

しかし、多くの人が眠気に対する対処方法をほとんど持っていません。

この実情は、まさに裸で極寒の地に立っていることと同じではないでしょうか。

眠気に悩まされている時間は、刺激に対しても鈍感になり、感動も少なくなります。

恋人と一緒に何かをしていても、目の前のことにフォーカスを当てられないことから、どこか上の空という状態が続いてしまいます。

眠気が発生しているときは頭も回らず、会話の返事もそっけないものとなってしまいます。

これでは周囲の人から何も考えていない人だと思われたり、人間関係の構築に大きな悪影響を及ぼしたりしてしまいます。

眠気が発生すると、目の前の活動への集中力は下がります。

すると面白いように「睡眠をとる」という行動の自己正当化がはじまります。

例えば自分の成長のために決めていた勉強の時間や、ダイエットのための運動の時間なども全て破棄して、何としても眠りをとろうとするのです。

しかし、眠気は、睡眠以外の行動をとるときの大きな壁となりますが、一旦行動を起こせば、何事もなかったかのように、消えてなくなるものです。決して睡眠の必要性があるから発生するものではありません。

「なんとなく口さみしいから甘いものを食べたい」という欲求に似ています。