ストレスに強い人、弱い人の違いはどこにあるのか。公認心理師の舟木彩乃さんは「心の穏やかさを保つには、把握可能感、処理可能感、有意味感が必要だ。ストレスに弱く、メンタル不調になりやすい人は特に処理可能感が欠けている」という――。

※本稿は、舟木彩乃『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部に筆者が加筆し、再編集したものです。

オフィスで頭に手を当てて悩むビジネスマン
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職場でメンタル不調になる人には共通点がある

私は、一般企業や官公庁で、職員の方のカウンセリングや働きやすい職場作りのコンサルティングをしている公認心理師です。公認心理師とは、聞き慣れない肩書かもしれませんが、心理に関する相談やアドバイスを行うカウンセラーの国家資格です。

働いている人は誰しも、大なり小なりストレスを抱えていることでしょう。職場の人間関係がツラい、上司がパワハラ気質、ママ友がマウントばかりとってくる、家庭が不和など――私のところに相談に来る方の9割が「人間関係」の悩みを抱えています。

これらの相談に来た方々に私が薦めているストレスマネジメント方法は、つらい出来事やストレスフルなことがあっても、うまく対処して、心の健やかさを保てる力「首尾一貫感覚」を高めることです。

カウンセリングの現場で、これまでのべ1万人以上の方の相談に乗ってきて、職場でメンタルを病んでしまう人たちには、ある共通点があることに気づきました。

今回は、その事例と対策について、お伝えしたいと思います。

心身の健康を保つ「首尾一貫感覚」とは

首尾一貫感覚とは、医療社会学者のアーロン・アントノフスキー博士が、1970年代に提唱したものです。博士は、第2次世界大戦中にナチスドイツのユダヤ人強制収容所に収容された経験をもちつつも、その後更年期を経てなお健康を保っていた女性たちについて研究し、彼女たちに共通する「考え方」や「価値観」を導き出したのです。

端的に言うならば、首尾一貫感覚は「大変な仕事、しんどい人間関係、ストレスフルな出来事があっても、明るく健康に生きる力」となります。そのため、別名「ストレス対処力」とよばれていて、主に下記の3つの感覚で構成されています。

① 把握可能感(「だいたいわかった」と思える感覚)――自分の置かれている状況や今後の展開をある程度、把握できると思うこと
② 処理可能感(「なんとかなる」と思える感覚)――自分に降りかかるストレスや障害にも対処できると思うこと
③ 有意味感(「どんなことにも意味がある」と思える感覚)――自分の人生や自分自身に起こることにはすべて意味があると思うこと