首尾一貫感覚の高い人、低い人の違い

首尾一貫感覚を理解するのは難しい……と思った人もいらっしゃるかもしれません。しかし、「首尾一貫感覚」は、その名称からもわかるように、あくまでも“感覚”なのです。したがって、“なんとなく”あるいは“感覚的に”とらえていただければ十分です。

「つらい。どうしたらいいかわからない」状況において、首尾一貫感覚の高い人と低い人とでは具体的にどのような違いがあるのか、実際のエピソードでご説明します。

私のところに相談にきた松本さん(仮名/30代女性)は、入社して以来ずっと同じ部署にいましたが、別の部署に異動になって問題にぶつかりました。仕事の内容は大きく変わらなかったのですが、新しい上司や同僚との人間関係や部署の雰囲気が自分に合わなかったのです。

具体的には、上司の指示がわかりにくく、聞き直したりすると機嫌悪く対応されることがストレスだったようです。また、殺伐とした雰囲気の部署で、仕事以外の話ができる同僚もいませんでした。

うつ病の女性従業員
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです

なんとかなると思えない、うまくいくと思えない…

松本さんは、この部署で働き続けることは難しいと思い、今後どうしたらいいかわからなくなったため相談にきたのです。そのときの松本さんの考え方やとらえ方を首尾一貫感覚の3つの感覚で掘り下げていくと、次のように整理できました。

〈首尾一貫感覚が低い松本さんの3つの感覚の状況〉
① 把握可能感:今のつらい状態で働き続けるのは難しいと思うけれど、今後、どうしたらいいかわからない
② 処理可能感:上司も同僚も頼りにできず、なんとかなるとは思えない
③ 有意味感 :この問題を乗り越えることに意義を見出せない

どんな人でも、職場環境が変われば相応のストレスを感じるものです。松本さんのように考えてしまうのは、しかたがないのかもしれません。

では、首尾一貫感覚でどのように考えればいいのでしょうか。

<首尾一貫感覚の高い人の3つの感覚の状況>
① 把握可能感:今は部署を異動したばかりだから大変なだけで、少しずつ慣れてくれば変わるだろう。この部署の会社の中での役割や評価を確認してみれば、少しは状況が変わるかも
② 処理可能感:今までもピンチを乗り越えてきたし、今回もなんとかなるだろう。とりあえず上司のことは、前の部署の先輩に相談してみよう。あるいは友人を誘って飲みに行って息抜きをしつつ、どうにかなると思って仕事をしていれば、そのうち話せる人もできて、ちょっとずつ職場にもなじめるだろう
③ 有意味感 :今の状況を乗り越えることで自分は成長することができる