茶道文化の普及と日本・国連親善大使として世界平和に貢献するために、年に12~13回は世界各国を訪れます。海外から帰ってくるたびに、日本のビジネスマンの元気のなさが気がかりで仕方ありません。
とくに朝の通勤時間帯に都心を車で通るときなどには、出勤の人がうつむきながら暗い表情でビルへと流れ込んでいく様子を目の当たりにします。ビルの入り口には守衛が立っていて、社員一人ひとりに「おはようございます」と声をかけるのですが、それに答える声はほとんど聞こえません。
確かに、朝は眠くて辛いものです。人によっては仕事でいろんな問題を抱えているのでしょう。もしかしたら、家庭のトラブルを背負っているかもしれません。でも朝は、大切な1日のはじまりです。暗い表情で1日を迎えるのはよくありません。
私は毎朝起きて顔を洗うとき、鏡に映っている自分に向かって「おはようさん。やぁ元気か?」と声をかけています。実はこれ、私が小学生のころからずっと実践していることなのです。
小学生のころの私といえば、裏千家の家元の跡継ぎだったことから「千家のボンボン」と言われ、同級生からも上級生からもいじめられたことがありました。そんなとき母から「そんな仏頂面して泣きそうな顔をしていたらダメ。朝起きたら、まず鏡に映っている自分に『おはようございます』と声をかけ、夜寝る前には『おやすみなさい、明日も元気でね』と語りかけてごらんなさい」と言われたのです。それを実践してみると、どんな人に対しても自分から明るく「おはようございます」と言えるようになり、自然といじめはなくなったものです。
ぜひ皆さんも、朝と晩、鏡に映っている自分と向き合う習慣を身につけてみてください。鏡に映っている自分は貧相な顔をしていませんか? 余裕のない顔になっていませんか? 自分を客観的に見て会話をする時間をつくることで表情が豊かになり、心にも余裕が生まれます。そして、人に会ったら自分から「おはようございます!」と元気に声をかけてみてください。そうすれば、嫌なことも辛いことも一瞬で払いのけることができるはずです。