人生なんてものは、経験の積み重ねだからね。積み重ねていく間には、失敗なんかなんぼでもある。失敗は失敗と認めて、それを踏み台にして、前に進んでいけばいいんだよ。
何をするのだって、いっぺんで成功する人なんてなかなかいない。逆にスムーズに成功したら、あとになってからが怖いよ。失敗したときは、必要な経験を積んでいるんだ、教えてもらっているんだと思うことだね。
戦後間もないころ、手づくりのラジオが流行ったけれど、あれ、聴きたい局に合わせるのが難しいんだ。ネジを回してチューニングをするときに「このへんかな?」というあたりで止めればいいのに、最初はつい回しすぎて、聴こえなくなっちゃう。そのうちに、電波をうまくつかまえるコツを覚えるんだな。
何ごともそれと同じで、繰り返し、繰り返しやっているうちに、いろんなヒントを得たり、コツを覚えたりして「これなら合格」というところへたどり着くんだよ。
だから、1回や2回失敗したからって、青くなったりすることはない。学校だって、授業料を払わなければ卒業できないでしょう?
一つ失敗するごとに「1月分の月謝を納めた」くらいに考えたらいいんだよ。そういうことじゃないのかな。
僕なんか、若いころは失敗だらけの人生だった。学校の勉強は中途半端だし、兵隊に志願したら、うろうろしている間に終戦になっちゃった。