相手との交渉を有利に進めるにはどうすればいいか。教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志さんは「人は与えてくる人を選ぶ心理が働く。この『返報性の原理』を交渉で活かす最大のコツは、自分から率先して『貸し』をつくりにいくことだ。自分にとって大事な条件をいきなり譲歩するのではなく、自分にとってはたいして重要でないけれど、相手にとっては重要なポイントを探るといい」という――。

※本稿は、犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。

フランスの季節の春のデザートでいっぱいの段ボール箱
写真=iStock.com/Lukas Hodon
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人は与えてくれる人を選ぶ

あなたもこんな経験をしたことがありませんか?

・スーパーの食品コーナーで試食をしたあと、「何か買わなくちゃ申し訳ない」と思い、予定になかったものを買ってしまった
・同じ取引条件2社のどちらかを選ぶ際、打ち合わせのときに手土産でいつも自分の好きなスイーツをくれる担当者の会社を選びたくなる

このように、「他人から恩恵を受けたら、似たような形でそのお返しをしなくてはならない」という心理を「返報性の原理」といいます(Cialdini,1984)。この原理に従うと、人はあたえてくれる人を選ぶ。つまり、先に相手にあたえることで、相手から選ばれやすくなるのです。

また、あたえるものには食品や化粧品、手土産など、物質的なものだけでなく、相談に乗る、仕事を手伝うなどの行為も含まれます。恩恵となるものも金銭的な価値が明確なものだけでなく、笑顔で接する、情報を提供する、何らかの機会をあたえるなどさまざまな種類があります。

たとえば、「自分のSNSで相手の商品サービスを紹介してあげる」という行為でも返報性の原理は働きます。これは自分の時間や労力はもちろんのこと、自分の「信用」も使っているからです。

相手は「○○さんはこんなにもしてくれた。自分も何かお返ししなくっちゃ!」と感じ、その後に交渉があった場合は、こちらの提案する条件を受け入れてくれる可能性が一気に高まるのです。