家事をやりたがらない相手を変えるにはどうすればいいのか。教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志さんは「当事者意識に欠けているので、『やってよ』と言われても本人はピンとこない。こうした人には『オルタナティブ・チョイス・クローズ』という方法が有効だ」という――。

※本稿は、犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。

家事を手伝わない夫に文句を言う妻
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「家事手伝ってよ」と言われてもピンとこない

「休みの日くらい、少しは家事を手伝ったらどうなの?」
「こっちも仕事なんだから、先に帰ってきたならこれくらいやってくれていいんじゃない?」
「ゴミ出しやっただけで、“やった感”出さないでよ。誰がゴミ袋に詰めたと思ってるの?」

どれも家事に関する言い争いでよく聞くフレーズです。

夫婦共働きが当たり前の今、家事の分担は家庭の平和を守る重要な事項。特に年末年始のお休み、夏休みなど、お互いが家にいて、それぞれの行動がよく見えるときほど、衝突が生じます。

でも、できれば疲れる言い争いは避け、お互いに納得のいく落としどころをみつけたいもの。そこで、家事をしてほしい側と、家事を面倒くさがる側で分かれたとき、モメずに済むちょっとしたコツを紹介します。

基本的に家事を面倒くさがる側は、自分が家事をするという当事者意識に欠けています。その相手に冒頭のようなフレーズをぶつけても、ピンときません。

「少しは家事を手伝ったらどうなの?」「これくらいやってくれていいんじゃない?」と言われても、すべきことや範囲がわからないからです。当然、「そんなこともわからないの?」と腹が立ちますが、ここはぐっとこらえましょう。

お願いするのではなく、選ばせるのがいい

大事なのは、相手に動いてもらうこと。そこで、こんなふうに聞きます。

「お風呂の掃除と洗濯モノを干すの、どっちだったらできそう? どっちもできる?」
「ゴミ箱のゴミを全部集めてゴミ袋にまとめるのと、ゴミ出し、どっちがいい?」

つまり、「何かやって」ではなく、「この中のどれがいい?」と質問するわけです。

すると、相手はその選択肢の中から選ぼうと思考が働きます。

その結果、言い争いを避けながら、してほしい家事を分担することができるのです。

じつは、このやりとりにはある“交渉のテクニック”が使われていて、その効果はさまざまな場面で応用することができます。

「今日の晩ごはんだけど、豚肉、鶏肉、牛肉。どれを食べたい?」

私たちはこんなふうに質問されると、なんとなく魚を食べたい気分だったとしても、3つのお肉のいずれかを選んで答えてしまいます。

これはその場での注意が選択肢に向き、物事の判断に強い影響を与えるからです。

この心理を知っていると、あらゆる交渉で優位に立つことができます。

なぜなら、こちら側が選択肢を用意することで、相手の判断をその選択の枠に囲い込むことができるからです。