相手に選ばれる提案とはどのようなものか。教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志さんは「多くの人は2分の1の確率でお金を得られ、期待値250円のプラスになるとわかっていても、そうしたゲームに参加しない。この『損を回避する』傾向から、相手への提案では『メリット』よりも『デメリット』をアピールすると効果的だ」という――。

※本稿は、犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。

YESと刻印されたコイン
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非合理的でも損を避けるような選択、行動をする理由

突然ですが、1つ問題です。あなたの前に裏と表が出る確率がそれぞれ2分の1であるコインがあります。

このコインを投げて、表が出れば2000円もらえますが、裏が出たら1500円支払わなければならないゲームです。あなたはこのゲームに参加したいですか? それともやりたくないですか? どちらでしょう?

ちなみに、実際に得か損かの期待値を計算してみると、250円のプラス。つまり、ゲームに参加したほうが得する可能性が高いのです。ところが、行動経済学の研究によると、多くの人はゲームに参加しません。

合理的な「得する」選択をしないのです。

その原因は、私たちは利益と損失の可能性を比較するとき、損失することを回避したいと感じるから。このような得することへの期待や得をしたうれしさよりも、損する怖さや後悔を大きく感じる「感じ方の不思議」をまとめた理論は「プロスペクト理論」と呼ばれています(Kahneman& Tversky,1979)。

私たちは同じ金額を得しての「やったー!」よりも、損して「がっかり……」を強く感じ、だからこそ、非合理的でも損を避けるような選択、行動をしてしまいがちなのです。