上司に自分の意見を正確に伝えるにはどうすればいいか。教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志さんは「相手に『察して欲しい』という言い方ではズレた返答が返ってくる。感情ではなく、事実ベースで問題点を伝えることが重要だ」という――。

※本稿は、犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。

上司と部下の面談
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相談したのに「なんか、ズレている…」

あなたが自分の会社の上司に、「この仕事量、本当に無理です……」と、助けを求めたとしましょう。

すると、

「オレの若い頃はもっと大変だったぞ。だから、きっと、どうにかなる!」

と、返ってきました。

どうやら上司は励ましているつもりのようです。でも、「なんか、ズレている……」「そこじゃないんだけど……」とモヤモヤしてしまいますよね?

このようなとき、どう伝えれば、あなたが多すぎると感じている仕事量を減らすことができるのでしょうか。

私も会社員時代、仕事量が自分のキャパシティを明らかにオーバーしたことがいくどもありました。

先輩や上司に、「こんなに忙しいのに、この業務、来週が締め切りなんて、本当にムリです……」と伝えても、「みんないっしょ」「がんばれ」と言われるばかりでいっこうに仕事を減らすことができませんでした。

ついには無理がたたって体を壊し、周囲に迷惑をかけることに。

それ以降、伝え方、特に、要望や提案を通すテクニックや交渉スキルの必要性を感じたのです。

“本当に言いたいこと”が隠されてしまっている

幸いなことに、社会人になってから通った大学院で交渉学を学ぶ機会がありました。

そこで、弁護士や外交官のような交渉を専門とする仕事に就いていない自分でも交渉力さえ高めることができたら、もっと自分の要望や提案が通り、人生の自由度が上がると考えました。

そこで私は、基礎の基礎から交渉術を徹底的に身につけようと決意。最優先で学んだのが、自分の要望や提案を通す手法です。

さっそくその手法について、説明しましょう。

自分の提案をどうにかして通したいとき、「せめて、これだけは相手に飲んでほしい……!」と強く望んでいる要望があるときに使える交渉テクニックが、自分の「主張」と「根拠」をセットにして伝えること。

冒頭のあなたと上司のやりとりの「この仕事量、本当に無理です……」は「……」の部分に「主張」の重要部分が隠されてしまい、さらに「根拠」も欠けています。すると、上司からは部下がボヤいているように見えてしまい、的外れな叱咤しった激励につながってしまうのです。

伝える順番は、「根拠→主張」または「主張→根拠」のどちらでもOKです。大事なのは、2つがセットになっていること。フレーズにすると、「○○である(根拠)。だから、□□だ(主張)」「□□です(主張)。なぜなら、○○だからです(根拠)」となります。