忙しそうな上司に相談を持ちかけるとき、どう声をかけたらいいのか。人事評価「トップ5%」社員のデータを収集・分析したクロスリバー代表の越川慎司さんは「トップ5%人材になる人は『1分だけいいですか?』とは言いません。最初の10秒で要点を伝え、相手が答えやすいように研ぎ澄まされた質問を繰り出します」という──。(第3回/全5回)

「リモートワークだと意思疎通が難しい」は本当か

コロナ禍でリモートワークが広く導入されたことで、ビジネスの現場は一変しました。昨今問題になっているのは、リモートワークで意思疎通がうまくいかなくなった、あるいは、そのため業務に支障が生じ、生産性が低下した、というようなケースです。

なかには、リモートワークの導入で業務上の無駄を省き、生産性向上を実現しているチームもあります。それを考えれば、うまくいかないチームには、リモートワーク以外にも何か別の要因が隠されていそうです。

そこで、クロスリバーが800社17万人の調査をしたところ、意外な結果が明らかになりました。「リモートワークではコミュニケーションがうまく取れない」のではなく、そのようなチームは、「そもそもみんなが出社して仕事をしていた時からコミュニケーションがうまく取れていなかった」のです。

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「今ちょっといいですか?」が言えるチームは強い

リモートワークでも出社しても成果を出し続けるチームは、うまくいっていないチームに比べて社内会議時間が24%少なく、資料作成時間は25%少ないことが分かりました。また、メンバーの欠勤は、うまくいっているチームのほうが31%少なく、離職率も18%低いことが分かりました。

会議を減らして会話を増やし、悩みや喜びを共有できる状態、すなわち、「心理的安全性」があるチームは短い時間で成果を出すことができる、ということです。

チャットの履歴を分析したところ、うまくいっているチームは会話において「今ちょっといいですか?」というフレーズを最も多く使っていることが判明しました。一般的なチームの実に4倍以上。

メンバー同士で協力関係が成り立っていて、それゆえ互いに「(以前に助けたことがあるから)今回は頼ってもいい?」と聞くことができるのです。

したがって、まずは「今ちょっといいですか?」といつでも言い合えるチームになることが重要です。しかし、話はここで終わりません。