人事評価でトップ5%に入る人材は、普通の人材と何が違うのか。クロスリバー代表で、近著『29歳の教科書』が話題の越川慎司さんは「確実に結果が出ることなら誰でもできる。しかし、トップ5%社員は、報われないかもしれない中で小さな努力、情熱、気力、モチベーションを継続できる。それが周囲の信頼を育み、積み重ねて『抜擢』という成功を引き寄せている」という――。(第5回/全5回)

成功の多くは「セレンディピティ」

キャリアにおける成功の多くは、予測不可能な偶然の産物、つまり「セレンディピティ」から生まれるといえます。

キャリア論の権威であるスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授は「キャリアの形成は8割が偶然によるものである」と唱えています。これは、予想外の幸運を必然として受け入れ、それを自身の働き方に活かすという考え方です。

とくに20代の段階でセレンディピティを意識して働くことは、その後のキャリア形成に大きな影響を与えます。

椅子に座っているビジネスパーソンたち
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イーロン・マスクの宇宙事業の始まりは「振り込みミス」

実は、なにかと話題のイーロン・マスクも、「偶然の出会い」によってキャリアを築いた一人です。

創業したオンライン決済サービスの「ペイパル」をクーデターで更迭こうてつされた2000年のこと。イーロン・マスクは休暇中にたまたまプロペラ機に乗ったことをきっかけに、さらに遠くへ飛びたいと熱望するようになります。

火星への探査計画を調べ、情報収集のために火星協会のパーティーに参加するべく、会費を送金。500ドルの会費を払うつもりが、何を間違ったか彼は5000ドルを振り込んでしまいます。

誤って高額を振り込んだことで、宇宙飛行に関する重要人物たちが集まったテーブルに座ることになり、これがのちの宇宙事業「スペースX」へとつながっていきます。

イーロン・マスクは、行動を続けることで偶然を必然にしてしまったのです。