※本稿は、金藤純子『今すぐ逃げて!人ごとではない自然災害』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
約50年前と比べて雨の降り方が激変している
桝谷さんに、私がまず聞きたかったのは、西日本豪雨でなぜ河川が氾濫したのかということです。その質問を投げたところ、
「近年は雨の降り方がだいぶ変わってしまっていて、小田川という器が耐えられる以上の雨が降ってしまったということにつきますね」
とのことでした。
え? 器?
「始まるはずの工事が始まっていなかったから」とか、そういう答えが来るものだと思っていたのに、違うのですね。「川の器以上の雨が降っちゃったから」だなんて……。こんな発言が世の中に出たら、クビになったりしないのかしら、と私のほうがびっくりしてしまいました。
そこで、もう少し詳しく雨の降り方についてお話を伺いました。図表1を見るとわかる通り、最近では雨の降り方が非常に激しくなってきています。時間雨量50ミリを超える回数が1976~1985年の10年間では平均174回だったものが、2010~2019年では平均251回となり、1.4倍ほど増加しているのです。
水害被害額も毎年のように更新されている
特に図の黒の矢印で示していますが、毎年のように大きな災害が全国のどこかで発生しているというような状況です。
2019年の水害被害額が統計開始以来最大になりましたが、この年はあの西日本豪雨に見舞われた年の翌年です。その翌年が最大になってしまったのです。ちなみに2019年には令和元年東日本台風が上陸し、関東・東北地方を中心に142カ所で堤防決壊が発生しました。
この年の一年間の水害被害が2兆1800億円です。2番目は台風が10個も日本に上陸した2004年で、2兆200億円です。この年は、京都府舞鶴市の由良川の堤防が決壊し、観光バスが立ち往生して、バスの屋根の上に助けを求める人がたくさん乗っていたのが印象的でした。なお、西日本豪雨が発生した2018年の水害被害額は約1兆4050億円です。
なぜこんなに雨の降り方が変わってきたのか。それはやはり地球温暖化の影響だというのが専門家の見解です。産業革命があった1800年代や1900年の初頭以降からどんどん気温が上がっていて、21世紀末になる頃には、2~4℃上昇するようなシナリオもあります。