まとまった資金を投資するとき、分割投資か一括投資、どちらのほうがよりよい投資成果を期待できるのだろうか。ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは「実は、分割投資は一括投資よりも投資成果が劣るだけでなく、元本割れの確率すら上がってしまう」という――。

※本稿は、藤川 太『「新NISAバブル」に気をつけろ!』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

分割投資よりも一括投資のほうがよい投資成果を期待できる

まとまったお金のある人の運用プランを考えてみましょう。まとまったお金があれば、一括で投資することも、コツコツと分割して投資することも可能です。

どちらのほうがよい投資成果を期待できるのでしょうか。一括投資できる人が少しずつコツコツ投資することは「分割投資」と呼ばれ、「積立投資」とは区別されます。分割投資は分散投資と同じように見えますが、分散投資は投資する対象を分けること、分割投資は投資する時期を分けることで異なるものです。

一括投資の将来予測は図表1の120万円を先進国株式100%に10年間投資したケースを見てください。

これに対し、月1万円ずつ先進国株式に10年間分割投資した投資成果の予測が、図表2です。

まず、実現確率50%の予測を見ると、一括投資は285.8万円以上、分割投資は190.4万円以上で一括投資の圧勝です。次に実現確率90%を見ると、一括投資は128.9万円以上、分割投資は109.2万円以上とこちらも一括投資の圧勝です。

コツコツ分割投資の元本割れ確率が高くなるワケ

さらに、元本割れ確率を確認してみましょう。一括投資は8.1%、分割投資は15.5%となり、こちらも一括投資のほうが有利になりました。一括で投資するのは怖いので、分割投資する方も多いと思います。投資する時期を分けることでリスク分散できる気がします。ところが、こうして分析すると、分割投資は投資成果が劣るだけでなく、元本割れの確率すら上がってしまうことがわかります。

なぜこんな現象が起こるのでしょうか。その理由は意外に単純です。一括投資なら、全額を丸々10年間運用します。しかし分割投資の場合、後から投資するお金の投資期間が徐々に短くなっていきます。丸々10年間運用するのは、最初に積み立てた1万円だけです。3年後に積み立てた1万円の運用期間は残り7年、8年後なら残り2年、最後に積み立てた1万円に至っては、わずか1カ月しか運用できません。これらを平均した運用期間はほぼ半分と短くなりますから、それだけ増え方も小さくなるし、元本割れ確率も下がらないのです。