40代にもなると、記憶力や発想力の低下を感じ始める。70歳まで働かなければならないといわれるいま、「老化」するにはまだ早い。いったいどうすれば。『好奇心脳』を上梓した脳内科医の加藤俊徳さんは「それは本当に『老化』なのか疑ったほうがいい。現代人はさまざまなリスクファクターに囲まれていて、そのために一時的な脳の機能低下に陥る人が大勢いる」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、加藤俊徳著『1万人の脳を見た名医が教える 好奇心脳』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

現代の中高年が抱える問題とは?

脳のMRI(磁気共鳴画像法)から脳の診断・治療を行う私のクリニックでは、これまで1万人を超える人の脳を診断してきました。その中で、とくに中高年世代の方々は「ある共通の問題」を抱えていることが浮かび上がってきました。

中高年世代は、脳の機能低下や老化以前に、長年自己感情を抑圧してきたために自らの「好奇心」をしぼませ、結果的に脳の成長を阻んでしまっているのです。

多くの人が誤解しているのですが、脳はいくつになっても成長する器官です。そして「好奇心」は、衰えてきた脳にとっては成長の起爆剤であり、記憶力や認知機能を高める「魔法の薬」となるのです。

にもかかわらず、そんな好奇心を失い、脳の成長を阻害させている。そんな中高年世代を分析していくと、次のようなリスクファクターに直面していることがわかってきました。

1つずつ見ていきましょう。

ソファに仰向けで横たわる女性
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです

【リスク①】脳疲労

原因の1つにストレスあり

1日の終わりに、「今日は疲れたなー」と、強い疲労感を覚えることはありませんか。実は、私たちが疲労を感じるときは体が疲れているというより、むしろ「脳が疲弊している」サインと考えられます。

脳疲労の原因の1つに、精神的なストレスがあります。そして疲労感やストレスには、強い人と弱い人がいます。

疲労やストレスへの「耐性」は、ある程度年齢的な経験値もありますが、それ以上に個人差が非常に大きいといえます。「この程度の仕事や作業量は大丈夫だろう」とか、「このくらいは許容範囲のはず」などと、他人が判断するのは難しいのです。

本人の中では、知らず知らずのうちに疲れやストレスが溜まっていき、その状態が3~4カ月続いたあとに突然、大きな疲労感や心身の不調となってどっと現れてくる場合があります。

「頑張らなきゃ」と思ったら、すでに脳疲労は始まっていると考えていいかもしれません。人によっては、疲労感やストレスが、うつ状態につながることもありますので、注意が必要です。

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