※本稿は、佐藤一磨『残酷すぎる幸せとお金の経済学』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
子どもは本当に幸せの象徴?
みなさんは『うちの3姉妹』というアニメをご存じでしょうか。松本ぷりっつ先生のブログで発表されたマンガが原作で、松本先生と子どもたちとの関係をおもしろおかしく描いた作品です。
この作品では個性的な3姉妹が織りなすさまざまな問題や成長を母親の視点から描いています。これを見ると、「子育てって大変だな」と感じる半面、「でも、子どもっていいよね」とも思ってしまいます。
この作品以外にも子育てを描いた作品は数多くありますが、いずれも「子育ては正直大変だけど、それ以上に得るものがあって、幸せ」というメッセージを読み取ることができます。このように、子どもを持つことが幸せにつながるという考えは一般的であり、多くの人が同意するものではないかと思います。
しかし、これは本当なのでしょうか。本当に、子どもを持つことが幸せにつながるのでしょうか。
前述のように、子育てには大変な面と子どもを持つことの喜びといった二つの側面があります。多くの人が子育てのプラスの面が大きいと考えているようですが、もしそうではない場合、子どもを持つことが親の幸福度を低下させている可能性もあります。
この実態を本稿ではデータを用いて、定量的に明らかにしていきたいと思います。
子どものいる女性のほうが生活満足度が低い
子どもを持つことは、親、とくに子育ての主体となる女性の幸せにどのような影響を及ぼすのでしょうか。
この問いは、これまで日本を含めたさまざまな国で検証されてきました。そして、それらの研究結果を見ると、ショッキングな現実が見えてきます。
図表1は、日本の既婚女性の子どもの有無と幸せの関係を示しています。分析対象は約2万2000人の既婚女性であり、1993~2017年までが分析期間となっています。なお、ここでは幸せの指標として生活満足度を用いています。
図表1から読み取れることはシンプルです。それは、「日本では、子どものいる女性のほうが生活全般の満足度が低くなる」ということです。
図表1の分析結果は、統計的な手法を用いて年齢、学歴、世帯所得などのさまざまな個人属性の影響をコントロールしても変わりません。働く妻や専業主婦に分析対象を分けた場合でも、子どものいる女性の満足度のほうが低くなっていました。