将来の投資成果は、リターンだけでなくリスクも含めて予測できたら安心だ。実際にそんなことができるのか。ファイナンシャルプランナーの藤川太さんは「よくある右肩上がりに資産が増えていくグラフを鵜呑みにするのは危険だ。私は経済ショックなどのリスク要因を織り込んだ資産運用シミュレーターを開発した。これを使うと、平均値からはわからない『富める少数』と『そうでない多数』という世界が浮かび上がる」という――。

※本稿は、藤川 太『「新NISAバブル」に気をつけろ!』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

よく見かけるこの右肩上がりのグラフは危険!

資産運用というと、図表1のようなグラフを見たことがないでしょうか。資産運用に関する雑誌や書籍には、よくこういう曲線が描かれているはずです。

この曲線のように順調に資産が増えていくのなら、資産運用をやらない手はありません。でも、実際にはこんなにうまくはいきません。それを本能的に感じ取っているから、多くの方は運用に踏み切ることができません。資産運用がなぜわかりにくくて、怖いのか。それは、リスクがあるからです。そして、このグラフにはリスクという概念がまったく表現されていないのです。

リスクには損をする、値下がりをする、元本割れする、儲からない、インフレに負けてしまう、使いたいときに使えない、将来の値段がわからない、値動きが大きい等々、様々な定義があり、人によって感じ方も違います。ただ、資産運用においては「ある一定期間(例えば1年間など)の収益率のブレ幅」のことをリスクと定義します。見込まれる収益率の振れ幅が大きければリスクが大きい、振れ幅が小さければリスクも小さい、ということです。

経済ショックからは誰も逃れられない

資産運用において恐ろしいのは、これまでに10年程度に一度、不規則に襲ってきている経済ショックです。図表3は、2001年以降に投資された資産価格の値動きと、その価値の直近の最高値からの下落率(ドローダウン)のチャートです(先進国株式ファンドのみに投資した場合と、先進国株式ファンド・国内株式ファンド・先進国債券ファンド・国内債券ファンドの4つに25%ずつ分散投資した場合の2種類)。

2007年のサブプライム住宅ローンショック、その後に続いた2008年のリーマンショック時では、それぞれ価格が大きく下がっていることがわかります。中でも先進国株式ファンドのドローダウンは、何と66%と直近の最高値から3分1にまで下落したことがわかります。それが下落前の最高値の水準に戻ったのは2014年6月ですから7年弱もかかっています。こうした大規模な経済ショックを事前に予測し、かわすことは困難です。2020年初頭に始まった新型コロナウイルス感染症の流行でも、世界中の株価指数が3割強下落しました。10年単位で長期投資をするならば、こうした大きな株価変動と無縁ではいられません。