戦前は女性が40代での出産が普通にあった
【海老原】女性が余裕ある人生を送れるように――そのためには、ヨコの改革で時間的余裕を、タテの改革で金銭的余裕を――というお話を伺いました。
タテ・ヨコと出て来たところで、語呂合わせではないのですが、「奥行き」についても考えてみたいところです。人生全体について、もっと余裕を持たせるにはどうしたらいいか、と。
先ほどからお話ししている「早婚・早産」論についてネットには、30代女性を「賞味期限切れ」と揶揄する投稿がたくさん見つかります。たとえば、年下の彼との結婚話が出ている36歳の女性の例。「孫の顔が見られないのは嫌だ、どんなにいい女性でも受け入れられない、と彼の両親が猛反対している」とか。
私はこうした状況に一石を投じたいのです。
実は40代になると子どもが産めなくなるという話は戦前にはありませんでした。40代の出生率(合計特殊出産率ではなく、年齢別出生数から算出した単純出生率)は、1925年だと0.4強、終戦直後でも0.3近くありました。それが1948~1960年のたった12年間に急減少し、「40代は産まない」が常識化していきます。
妊孕率(子どもを産める力)に関する調査を見ても、40歳の女性のそれは、30歳と比べて7割以上もあり、思うほど落ちてはいません。確かに「3割弱低下」しますが、それも、元々不妊傾向だった女性が大きく数字を下げています。正常な女性の妊孕率はそれほど低下していません。しかも、こうした妊孕力調査は、1980年代までの「不妊治療がほぼなかった時代」の自然出生率についての話です。不妊治療が進歩したことを踏まえれば、現在の40代出産可能性はかなり高いでしょう。
両親が年齢を理由に反対しても結婚すればいい
【権丈】まず、今の時代、両親がそうした理由で反対したとしても、結婚すればいいのではないかとは思います。せっかく素敵な人に巡り会えたのなら、その縁を大切にしてほしいですね。その上で、海老原さんのお話はこれから人生設計を考える女性たちにとって参考になる情報だと思います。女性がもっと余裕を持って人生を送り、やりたいことができるようになることは大切なことです。
一方で、妊娠・出産に関する正確な知識を持つ、相談できる人が周囲にいないことも、日本の女性にとっては不幸なことだと思います。たとえば、私が留学していたオランダでは家庭医という仕組みがあり、性に関することも親身に相談に乗ってくれていました。日本では病気にならないと医師に会えないようになっていますけど、何でも相談できる医師が身近にいたら助かる女性はたくさんいるはずです。