高学歴・高収入女性と低学歴・低収入男性が結婚市場に残る

【海老原】権丈先生の言う通り、学歴・収入で男女は差が少なくなり、金銭・日常生活で独身者が自由になってきたということは否定しませんが、それだけでは説明できない部分が大きいと私は思っています。

生涯未婚率のデータを見ると、女性は低年収者が低く、高年収者が高い。逆に男性は低年収者が高く、高年収者が低いと真逆になっています。男女差ないのであれば、権丈先生の話も違和感なく受け止められるのですが、この違い、どうお考えでしょうか?

「高年収者は一人で生きていけるが、低年収者は誰かに頼らなければならない」のであれば、男女ともに結婚は年収と逆相関となるでしょう。ところが、低年収の女性は男性に受け入れられるのに、低年収の男性は女性に受け入れられておりません。

【権丈】欧米諸国に関する研究によると、男女の学歴差があるときは、男性のほうが学歴が高いという組み合わせが多かったのですが、やや遅れて女性の学歴も高まってくると、概ね同程度の学歴での組み合わせが増えてきます。結婚も男女の役割分業の観点からは補完的な組み合わせが望ましいと考えられますが、実際には、同類婚といって、同じ学歴や社会階層同士の結婚が広がっています。マッチングアプリは、同類をマッチさせるツールですから、その普及は、同類婚を広めることになるのではないでしょうか。先にも話しましたが、とにかく今は、過渡期ですね。

疲れたビジネスマン
写真=iStock.com/AH86
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なぜ低学歴・低年収の男性は受け入れられないのか

【海老原】ネットには典型的な投稿が多々見られます。30代後半の女性で、結婚相手のことを親に話したら、「相手の学歴が自分より下」「サラリーマンではない」といった理由で、会う前から否定されたといった。これ、女性の問題ではなく、社会の問題だと思うんです。

海老原嗣生『少子化 女“性”たちの言葉なき主張』(プレジデント社)
海老原嗣生『少子化 女“性”たちの言葉なき主張』(プレジデント社)

今でも、生涯賃金は女性より男性が圧倒的に上です。とすると、結婚時点で女性が高収入だったとしても、その先長く考えるなら、やはり「将来性が高い(=学歴・職業が良い)男性を選ぶべき」と思ってしまうでしょう。また、昨今はイクメンが増えてきたとはいえ、家事・育児負担は未だに女性に偏っています。

高年収の女性が、低年収の男性と結婚したとしても、彼が家事育児の大半を担ってくれる可能性は高くありません。だから、女性は仕事を今まで通りに続けられない可能性が高い。仮に、もしそんな「髪結いの亭主」でも良いと考えたとしても、今度は、世間の理解が得られないでしょう。こうした問題が錯綜し、それが親兄弟・友人などの心で増幅され、未婚女性に向かってくるわけです。

「昭和の心」は色濃く残る。そしてその裏には、女性にとっての不都合がまだまだ残っている。時間はかかるけれど、そこをしっかり正していくべきだと、強く思っています。