トラブル対応の苦しい日々をどう過ごすか
その女性社員は、20代後半にさしかかった当時、自社商品のトラブル対応に時間を費やす日々を送っていました。辛い仕事です。しかし、逃げることなく商品の品質不良の課題に真摯に向き合い、開発部門と顧客の間に立って奔走していました。
顧客だけを第一に考えるのではなく、リソース不足である開発部門の苦しい状況も理解し、両者と一緒に解決策を共創したのです。
トラブル対応中は営業活動の時間が限られ、自身の営業成績は低迷しました。しかし、品質問題の解決は他の顧客への売り上げ拡大につながると見込んだ彼女は、ひたむきに社内の各部署を巻き込むことに没頭したのです。
そうして1年半かけて品質問題を解決し、迷惑をかけた顧客以外にも説明に回り、想定以上の追加契約を獲得することができました。
小さな信頼の積み重ねなしに「抜擢」はない
開発部門の課長は、彼女の「ひたむきさ」と「巻き込み力」をしっかり見ていました。そして、社長から託された大型案件の担当者を検討している営業担当役員に、彼女に対する感謝と称賛を伝えたのです。
女性社員の小さな信頼の積み重ねが、大型案件への抜擢という「セレンディピティ」を生むことになった瞬間でした。
彼女は、この大型案件をうまくクローズさせて、現在は最年少マネージャーとなり、将来の役員候補として教育プログラムを受けています。
「偶然」を「必然」に変えるためには、信頼の積み重ねが欠かせません。しかし、これは一朝一夕にできるものではありません。信頼とは時間とともに培われるもので、それには一貫した行動と強い意識が必要となります。