そんなAさんを取り巻く状況が一変したのは、入社6年目のことでした。
周囲の優しさに甘えたAさんの大失敗
上司が変わり、新人が2人同時にチームに加わりました。すると、先輩たちの態度が大きく変わったのだそうです。それまでは急に声をかけても気さくに応じてくれたのが、にわかに当たりが厳しくなりました。
「そんなことも分からないのかよ。今まで何やってたんだよ、後輩が見てるぞ」
実はAさんは、新人ないし一番の若手として優しく扱われる状態に甘んじ、十分な成長ができていなかったのです。その後、チームが新人2人の教育にエネルギーを注ぐようになる中で、Aさんは事実上放置されてしまいました。
Aさんがようやく一人で仕事を回すことができるようになったのは、30歳を過ぎてからだったそうです。ずいぶん遠回りをすることになってしまいました。
不遇の状態をチャンスに変えたBさん
一方、怖い上司の下に配属されたBさん。Aさんのように周囲からかわいがられるような環境ではありません。上司の機嫌を気にしながら業務をこなす毎日で、しっかりした教育や指導を受けることもなかったそうです。
そこでBさんは、いきなり成功を目指すことはせず、失敗を積み重ねてやがて大きな案件を取り扱えるようになろうと、経験を積み重ねていったそうです。
上司や先輩にいきなり聞くのではなく、まず自分で少しやってみて、うまくいかなかったら自分なりに原因を探る。原因を見つけたら、解決策を考えたうえで、上司や先輩に意見を求めるようにしたそうです。
初めは失敗続きで怒られることもありましたが、めげずに継続するうちに、次第に周囲の反応が応援するようなスタンスに変わっていきました。いつしか自発的に助けてくれる先輩や同僚が増えていったそうです。
「助けてくれる人」をどれだけ増やせるか
じっと机に座っているのではなく、社内のさまざまな人たちと積極的にコミュニケーションを重ね、社内イベントにも積極的に参加したBさん。行動を積み重ねて、社内に「困ったときに助けてもらえる人」を増やしていきました。
Bさんは、残念ながら20代では目立った成果を出すことはできませんでした。しかし、30代半ばで広報部へ異動。そこで成果を上げて、40代前半になった今は広報室長として活躍しています。
Bさんは時間をかけて積み重ね、磨いてきたその「声かけ力」「巻込力」を社外向けにも発揮し、今では多くのジャーナリストに記事を書いてもらって企業価値を高めるなど、なくてはならない存在になっています。