「理想の上司」とはどんな存在なのか。経済評論家の上念司さんは「管理職の仕事とは、部下にノウハウを指導し、一緒に問題解決に取り組むこと。日本の大企業には、部下に丸投げし、結果が出ないとチクチク嫌味を言うだけのダメ上司が多すぎる」という――。

※本稿は、上念司『論破力より伝達力』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

ビジネスマン
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部下を動かしたいなら、結果を出させる

会話だけで部下の心をつかみ、思い通りに動かすことは不可能です。そんな会話術があると吹聴する人はいますが、ウソです。信じないでください。会話のやり方で相手を催眠状態にするなんて無理。常識で考えましょう。

さて、会話を通じて人が動くとき、それ以前に様々なインセンティブがあります。そのインセンティブを喚起する大義名分などのおぜん立てがあって、初めて言葉が力を持ちます。

この話を、管理職の方向けにもう少しかみ砕いて説明しましょう。端的に言うと、部下を動かしたいなら、部下に結果を出させましょう。これがまさにインセンティブそのもの。

会社員である限り、インセンティブはこれに尽きます。「○○さんの言う通りにしたら、すごく結果が出ました。次はどうしたらいいでしょうか、教えてください」と言ってもらえれば楽ですよね。そして、そのとき初めて言葉は伝わるわけです。

「結果にコミットする」ライザップの人気

逆に結果を出す方法も教えていないのに、褒め方や叱り方など小手先の会話術だけで部下を操ろうなどと思ってはいけません。もちろん絶対にできないとは言いませんがいつかその戦略は破綻します。仕事上の「成果」が出ないのならば、いくらよい褒め方や叱り方をしたところで最後は誰も動きません。結果の伴わない言葉で部下を褒めても、「この人はおだてるのがうまいな」と見透かされ、軽んじられて終わりでしょう。

ライザップがあれだけ売れているのも、インストラクターの褒め方がうまいからでしょうか? いいえ違います。インストラクターに言われた通りにすれば、きちんと体重を落とせるからです。「結果にコミットする」というキャッチコピーのまんまですね(ちなみに、ライザップを辞めた後に多くの人がリバウンドしてしまうのは自己責任です)。