「察して欲しい」と願うのは逆効果

「仕事量が多くて1つ1つの案件に少しずつ遅れが生じています。今後、取引先に迷惑がかかる可能性が高いです。案件Bを別のメンバーに頼むなど、仕事量の調整をお願いできますか?」

「仕事量が多すぎて、私も含め、チーム全員、残業が続き、疲れています。本格的に体調を崩し、納期に間に合わなかった場合、大きな損害が出ますよね。サポートメンバーを入れる、納期の延長を交渉するなど、対応をお願いします」

自分の要望や提案を通したいとき、言葉を濁しつつ「察して欲しい」と願うのは逆効果。強気、生意気と思われる……と不安かもしれませんが、「主張」と「根拠」を明確に示しましょう。それがあなたの自由につながります。

最後に、「根拠」を添えたやり取りにおける注意点を2つだけお伝えいたします。

注意点① 断定用語は、極力使わない
注意点② 相手の主張は否定しない

注意点①としては、「すべて」「100%」「必ず」「絶対に」などのような、断定する用語は使わないようにします。相手に「さすがにそれはいいすぎでしょ」と思われる可能性が高く、反例を示されると脆いからです。

主張を否定するのではなく、根拠を否定するといい

注意点②「相手の主張は否定しない」は、相手が自身の主張や要望を通そうと仕掛けてきたとした場合の注意点です。例えば、同じ会社の上司が仕事のスタンスを押しつけようとしてきたケースを想定します。

犬塚壮志『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』(サンクチュアリ出版)
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上司が、「オレが若い頃なんて同期の誰よりも先に課長になりたくって、昼夜問わず休日返上でがむしゃらに働いていたんだ(根拠)。だから、キミも愚痴をこぼす前に、プライベートをかなぐり捨ててがむしゃらに働いてみたらどうだ(主張)」といってきたとしましょう。

このとき、「がむしゃらになんて働きたくないんです」「その考え方には賛同できません」「プライベートは捨てたくありません」など、相手の主張は否定しないようにしましょう。それがたとえ本心からの言葉であったとしても、相手の感情を逆撫でし、精神論のぶつけ合いになりかねません。

そうではなく、相手の発言の根拠部分だけを狙い撃ちして否定するのです。

つまり、「ボクは同期より先に出世したいと思っていないんです」「そもそも、私は出世に興味がないんです」と相手の根拠を否定。すると、相手の主張を成立させなくすることができます。

ぜひ、自分の要望や提案には、相手が同じように考えることができる「客観性の高い根拠」を必ず添えるようにしてみてください。

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