学生には体験を教える
「どうしたら映画監督になれるんですか?」とよく聞かれる。
オレは芸大(注:東京芸術大学大学院映像研究科)の学生にも言うんだけど、「監督はどうやったらなれるかってもんじゃない。あらゆる方法を使ってもいい。とにかく早く監督になれ」と。というのはせっかく優れた才能を持っていても、今の映画会社のシステムじゃ、監督になるまでに才能とエネルギーをすべて使っちゃうんだ。
そういう人は映画監督になったら、とにかく嬉しいからカメラも動かすし、セットも大掛かりになる。大きなクレーンの上にカメラマンを乗せて、ぐわーんって動かすから、いったい何を撮ってんのかなと思ったら、会社員がタクシーから下りてビルに入っていくだけ……。大事件の撮影でもなんでもない。
日本映画は日本料理と似てるんだよ。お金はそんなにかけないけど、いい味を出してるというもの。それが日本映画。それとは逆にアメリカ映画は大量に作って大量販売でやっていけるでしょう。だから、クレーンをぐわーんって回して撮影したり、車をどっかんどっかんぶつけたりできる。日本映画じゃロケやっても、車をぶつけるスペースがないし、予算もないから、どっかんどっかんの映画を作るのは無理。
そうそう、芸大の学生には「早く映画監督になれ」という以外にも、教えてることがある。