私は即座に提携話を打ち切り、弁明のために来日した同社の副社長との面談を断った。それが「義」に反する卑劣な行為だと思ったからだ。信用が重視される国際社会、毅然としていなければ渡っていけない。

正義を貫くこと、裏表なく嘘をつかないこと、一言の重み。武士道でいう「誠」「名誉」「恥」の精神は、李氏も言うように、現代においてこそ再認識されなければならない。

新渡戸稲造の『武士道』は、傑出した日本人論であるだけでなく、「人間、いかにして生きるべきか」を教えてくれる名著だと考えている。だから、奈良本辰也訳の『武士道』と李登輝著『「武士道」解題』、この2冊はセットで手元に置き、今も折に触れ読み返している。

數土文夫氏厳選!「役職別」読むべき本

■部課長にお勧めの本

『李白-巨大なる野放図』『杜甫偉大なる憂鬱』宇野直人・江原正士著、平凡社

中国人にも通用する第一等の教養書としてぜひ読んでおきたい。唐・玄宗皇帝の時代、中国詩を確立したともいえる李白、杜甫の壮絶な人生と、後世に残した幾多の詩を解説とともに紹介する。

■若手、新入社員にお勧めの本

『リーダーのための中国古典』『中国古典に学ぶ 人を惹きつけるリーダーの条件』
守屋 洋著、日経ビジネス人文庫

これからリーダーを目指す若きビジネスマンに、その心構えを中国古典から学ぶ端緒になれば。

※すべて雑誌掲載当時

(高橋盛男=構成 市来朋久=撮影)
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