1986年に4人で立ち上げたメガネ21がどんどん業績を伸ばしていた頃、長年読み続けている漫画誌を買いに立ち寄った書店で、たまたま見つけたのが経済評論家・日下公人先生の『人事破壊』でした。
一読してほんとにビックリしました。「人事権は崩壊する」「正社員は部分品になる」「誰もが納得する志願制を」等々、21がやっていることは全部OK、まるで上から見ているんじゃないかっていうくらい、書いてある中身とウチのやり方とが一致していたんです。
90年代半ば頃の21は“胡散臭い会社”と見られていました。格安のメガネの売れ行きは好調だが、儲けは社員で山分けして会社には残さない。それなのに急成長を続け、社員には給料をちゃんと出している。ある経済学の教授に「そんなの不可能だろう」と食ってかかられたほど(笑)。でも、実のところ我流でつくったシステムだから、高卒で経済学も経営学も知らない僕は、本当にこれでいいのかどうか自信がなかったんです。
僕は会社の後輩に頼んで、出版社を通じて日下先生に手紙を送りました。手紙には、「ぜひ、ウチのチラシに載っていただきたい。その代わり、バイブルとして先生の本を買わせていただくし、ウチは生きた実例として先生の本の広告にもなる」と書いたんです。すると1カ月くらい経って、日下先生から直接電話がかかってきました。
先生には電話口でチラシの件を快諾していただき、「平本さん、今からいうことをメモしてください」とおっしゃって伝えていただいたのが、「価格破壊ができる会社は、人事破壊が済んでいる」というコピー。そらもう、僕は大喜びですよ。早速、先生の写真にこのコピーを添えたチラシをつくって大量に配りました。
僕は創業メンバー4人の中で一番年下だったので、先輩にはなかなか話を聞いてもらえなかったんですが、これを契機にそういうことはなくなりました。謝礼を固辞された日下先生には、相場の2倍で講演をお願いしました。先生が多忙なため、来ていただくのに2年もかかりましたが。