新渡戸稲造の『武士道』をいつも傍らに置き、チャレンジ精神を発揮しながら果敢に新規事業を立ち上げてきた女性経営者がいる。人材派遣から営業・カスタマーサービス分野のアウトソーシングまでの人材サービスを幅広く手がけているフジスタッフ会長の増山律子さんだ。
音楽関係の出版社に勤めていた増山さんは、栃木で実家の運送業を営む瑞比古さんと結婚。妻として母として充実した生活を送っていたのだが、瑞比古さんが85年に新規事業の立ち上げを目的に設立した富士総合サービスに監査役として名を連ねた。しかし、3カ月経っても何も事業が始まろうとはしない。危機感を募らせた増山さんが思いついたのが女性の人材派遣事業であった。
「クリスチャンである私は、栃木にYMCAを設立するお手伝いをしていました。その際に米国で暮らしたことのある方から、女性が派遣で仕事をして活躍しているお話を聞き、これから日本が経済発展していくうえで必要になる事業だと思いました。特に注目したものがコンピュータの入力関係の派遣でした。そして86年7月の労働者派遣法施行に合わせて、派遣業者としての申請を行ったのです」
そうした増山さんの読みは見事的中して、09年3月期の連結ベースで売上高874億8500万円、営業利益16億9900万円を達成し、派遣業界のなかでの確固たる地盤を築き上げた。