「トヨタはBEVで遅れている」に対する新社長の答え
4月7日、ついに佐藤恒治トヨタ新社長の初プレゼンが行われました。その名も「新体制方針説明会」。
数々の名発言で知られた名物トップ、豊田章男社長の後任だけに、当然次世代の発言力であり、ヴィジョンに注目が集まるわけですが、小沢も会場となった都内ホテルで直接見聞きして驚いたことがあります。
それはなによりも当のプレゼン内容。一般的に目を引いたのは「2026年までに新たに10モデル年間150万台」の新しいバッテリーEV販売目標設定でしょう。具体的な車名やサイズや価格感への言及がなかったのは残念ですが、質疑応答を含め1時間以上に及んだ説明会のほぼ冒頭に登場。
いまだにしつこく「トヨタはBEVで遅れている」と言われる中、その実態を正しくメディアに説明したい佐藤新社長の思惑が透けて見えます。
案の定、翌日のテレビ新聞大手メディアには「トヨタ2026年までにEV10モデル投入 年間150万台販売目標に」という見出しが続々と躍り、ある意味予想通りの展開なのでしょう。
今までは2021年末に「2030年までに(BEVや燃料電池車を合わせて)350万台」という目標を掲げていただけだったので、中間目標として非常に意欲的。これだけ作れれば周りを黙らせることができるはずです。
販売台数が減っているのに利益アップ
ただし小沢的に実は驚いたのは分かりやすくグラフ化した稼ぐ力の強化です。
今までも豊田章男社長時代から「意志ある踊り場」「損益分岐台数の引き下げ」などがキーワードになっていました。これらは、表面的には生産や販売台数が減っていても、それまで手が付けられなかった地道な原価低減や人材育成などに取り組み、強い基盤作りが進んでいることを表します。
損益分岐台数は、いわば何台以上作ると利益が出るかの指針で、低ければ低いほど高収益体質であることを示します。具体的にはトヨタはここ十数年で指針を30~40%下げたといいます。かの大谷翔平選手が見えないオフの間に充実した地味なトレーニングを積み、基礎体力を上げているようなお話です。
中でもグラフ化されたのは「未来への投資をしながら稼げる体質へと進化」の画面ですが、08年3月期には891万台を売って2兆2703億円(営業利益)を稼いでいたのが、14年後の22年3月期には(販売はコロナ禍から回復しつつあるとはいえ)823万台に減っているのに対し利益は3兆円弱まで増加。稼ぐ力が露骨にアップしているわけです。