bZシリーズの値下げは待ったなし

さらに驚いたのは、一連の体質強化で生まれた利益を「未来に投資する」と明言したことです。それはもちろん今まで散々言ってきたマルチパスウェイ=全方位戦略なわけで、主力のハイブリッドからPHEVからBEVから燃料電池からカーボンニュートラル燃料まで全方位に投資するのでしょうが、具体的にはやはりBEVが興味深い。

差し当たって資料には3年後の2026年までの地域別取り組みとして、先進国ではbZシリーズの性能強化とラインアップ拡充、米国では25年の3列SUVのBEV、中国では現地開発モデル、新興国ではピックアップトラックや小型車BEVとあります。

上海国際モーターショーにて世界初披露したbZシリーズの最新モデル
写真提供=トヨタ自動車
上海国際モーターショーにて世界初披露したbZシリーズの最新モデル

具体的には中国では一汽トヨタや広汽トヨタの自主ブランドのBEV、ASEANではハイラックスシリーズのBEVなどを出すのでしょう。

そしてここからは全くの小沢の希望的観測ですが、現行のbZ4Xや今後出るbZ3の実質値下げに踏み切るかもしれません。なぜなら現在年販約2万4000台に過ぎないトヨタのBEVをわずか3年で150万台に増やすには、今後出るはずの完全新戦略オールニューEVを待ってはいられないからです。

まずは現行BEV専用ブランドであるbZシリーズへのテコ入れが不可欠であり、出来る手はコスパ戦略ぐらいしかないのでは。現在日本で発売されているbZ4Xは世界的に安心して乗れるEVとして大変よく出来ていますが、イマドキのデジタルインパクトや電費的インパクトが足りません。

価格的は欧州で600万円台スタートで、日本では月々定額のサブスクリプションで10年間トータル1000万円弱というけっこうな値付け。値下げ抜きで、テスラやヒョンデはもちろん中国EVに対抗できるとは思えません。

トヨタとスバル共同開発の安心安全のバッテリーEVを、競合に負けない価格でリーズナブルに売る。今回のグループの稼ぐ力アピールはもしやそこに帰結するのでは? と思いました。

世界から求められているのは「カローラ的EV」

さらに今後グローバル最適部品を調達し、EV開発の工程を2分の1にして作るのは「カローラ的EV」です。名前は違うかもしれませんが、結局のところ日本車最大の根源的魅力は「良品廉価」。もちろんそうではない高付加価値戦略もあるのでしょうが、現状そこしか勝ち目はないと思います。

もしくは「クルマ屋の創るBEV」という新しいヴィジョンには、別の新しい魔法があるのでしょうか? だとしたらソイツを早く知りたいものです。

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