慢性的なストレスが続くと、人間はどうなるのか。公認心理師のみきいちたろうさんは「従来は、劇的な出来事がトラウマを生むとされてきました。しかし、近年の研究、臨床の成果から、実は人間は強度が低くても慢性的なストレスに弱く、ソーシャルサポートの欠如など脆弱性の変数(要件)を満たすとトラウマ(ストレス障害)になり、それが生きづらさの原因となっていることがわかってきました」という――。
※本稿は、みきいちたろう『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)の一部を再編集したものです。
日常生活のストレスがもたらす意外な高リスク
日常においてどのようなイベントがどの程度ストレスになるのかについて、社会学者のホームズ(T.H.Holmes)とレイ(R.H.Rahe)がまとめた「社会的再適応評価尺度」と呼ばれるものがあります。さらにこれを日本に適応できるようにした表があります(図表1)。
このように眺めると、意外な出来事が高いストレス値を示していることがわかります。誰もが体験する日常のちょっとした変化やイベントが30点、40点という値になっています。
そして、これらストレッサーの合計値と精神疾患との関連(リスク)を調べたところ、400点以上で78.8%の方が、300点台で67.4%、200点台で61.2%、100点台で57.1%、100点未満でも39.3%がリスクあり、となることがわかっています。
驚くのは、100点未満でも、4割近い人に精神疾患のリスクがあるということです。私たちは、日常の出来事であっても重なると容易にバランスを崩してしまうことがわかります。