※本稿は、片田珠美『自己正当化という病』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。
自分も悪いと認めるのが大人のふるまいだが…
誰だって自分が悪いとは思いたくない。これは誰にでも自己愛がある限り仕方ないことで、こうした傾向は各人の自己愛の強さに比例する。だから、何かうまくいかないことがあると、その原因をまず外部に探し求める人がほとんどだ。
とはいえ、問題を解決して状況を少しでも改善するには、目の前の現実を直視することが第一歩になる。そのうえで、自分にも責任の一端があると気づいたら、自分自身にも悪いところがあると認めるのが大人のふるまいだと私は思う。
ところが、それができず、他人や社会のせいにして文句ばかり言う人が多い。このように何でも責任転嫁する他責的傾向が強く、自己正当化ばかりする人が最近増えているように見える。
一体なぜなのか。本稿では、その背景にある社会的要因を分析したい。
「自分は被害者」と互いに不満と怒りを募らせる
現在の日本社会には「自分は割を食っている」と被害者意識を抱いている人が多い。みな互いに被害者意識を抱き、不満と怒りを募らせているように見える。
たとえば、非正規社員と正社員の間の軋轢である。非正規社員は「正社員は高い給料をもらっているくせに、ろくに働かず、面倒な仕事は全部私たちに押しつける。それなのに、仕事がなくなったら真っ先に切られるのは私たち」と愚痴をこぼす。
一方、正社員は「非正規社員には、責任感のない人が多い。注意したら、次の日から来なくなる。それに残業もしないので、何かあったら私たちが尻拭ぬぐいをさせられる」と不満を漏らす。
同様の関係は、育休明けで時短勤務をしている女性社員と独身の女性社員の間にもあるように見受けられる。時短勤務の女性社員が「勤務時間は短いのに、フルタイム勤務と同じ成果が求められる。そのくせ、給料は少ない。
育児、家事、仕事で大変な思いをしているのに、早く帰るときに白い目で見られて、腹が立つ」と愚痴をこぼせば、独身の女性社員も「時短勤務の社員が早く帰るので、その分私たちの仕事が増える。こっちが尻拭いしてあげているのに、そのことへの感謝もないので、報われない」と不満を漏らす。