自分の言動に問題があっても、自分の間違いを認めない人がいる。精神科医の片田珠美さんは「こういう人は、自分でも気づかないうちに自己正当化してしまっている。自己正当化をこじらせる要因の一つが、現状認識の甘さだ」と話す――。

※本稿は、片田珠美『自己正当化という病』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです。

自身の女性蔑視発言の責任を取り、辞任を表明した東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長=2021年2月12日
写真=AFP/時事通信フォト
自身の女性蔑視発言の責任を取り、辞任を表明した東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長=2021年2月12日

「モンスタークレーマー」はなぜ生まれるのか

どれだけ他人を傷つけても、周囲から批判されても、自分が悪いとは思わない人は、知らず知らずのうちに自己正当化していることが多い。こういう人を突き動かしているのは、主に次の三つの動機である。

①利得
②自己愛
③否認

まず、自分にとって得になると思えば、ひたすら自己正当化する。その主張が本当に正しいのか、ちゃんとした根拠があるのかということは考えない。いや、むしろ、そんなことはどうでもいい。

その典型が、遅刻やミスを繰り返したり、取引先からクレームが相次いだりして上司から叱責されると、「パワハラ」と騒ぎ立てて難を逃れようとする社員である。パワハラを告発した結果、上司から以前ほど厳しく注意されなくなると、それに味をしめて、同じことを繰り返す社員もいる。

あるいは、自分は悪くないのに、店員の態度や説明に落ち度があったせいで不快な思いをしたとか、損害をこうむったとか難癖をつけて謝罪を要求し、店側の出方によっては特別なサービスや値引きを享受しようとするクレーマーも同類だろう。

「すべて他人のせい、自分は悪くない」

また、自己愛が人一倍強い人も、しばしば自己正当化する。もちろん、自分が悪いとは思わない。それどころか、自分の価値観や考え方を他人に押しつけ、それが正しいことを他人に認めさせようとする。

しかも、自己正当化ばかりする人は、たとえ自分に落ち度や間違い、欠点や弱点があっても、決して認めようとしない。自らの非をすべて否認し、「悪いのは自分ではなく、相手だ」と強調する。いくら間違っても失言しても、ひたすら否認し、すべて他人のせいにすることによって、自分は悪くないという主張を貫く。

本人は必ずしも自覚していないかもしれないが、だいたい、この三つの動機のいずれかに突き動かされている。一つの動機だけというケースはまれで、複数の動機がからみ合っていることが多い。