「謝れば許してもらえる」はずもなく…
旅行から帰ってきた夫は、離婚届と置き手紙を見て、あわててMさんの実家に電話してきた。しかし、電話に出たMさんの父親が「娘はここにはいないから。これ以上電話しないでくれ。娘と連絡を取りたいのなら弁護士を通してくれ」と告げたところ、夫は「これまでも僕が謝れば、(Mさんは)許してくれたのだから、今回も許してくれるはず。直接会って謝りたい」と泣きついたという。
夫は「謝れば許してもらえる」と思い込んでいたようで、弁護士にも「妻に直接会って謝りたい」と話したらしい。それを聞いて、Mさんは激怒した。「謝れば許してもらえると思っていること自体、甘いのよ。これまで自分がしてきたことを悪いとは思っていないし、反省もしていないから、そんな甘い考えが出てくるんだわ。だから、絶対許さない」というのがMさんの言い分だった。
Mさんは弁護士と相談し、夫に「Mさんが要求している額の慰謝料を払って離婚してくれないのなら、裁判を起こすしかありません。訴状には、現在の請求額の数倍の金額を記載するつもりです」と伝えてもらった。弁護士は、「裁判になったら、不倫の事実が詳細に赤の他人の前で暴露されますよ。会社にも通達がいくかもしれません。これだけ不貞行為の証拠がそろっている以上、奥さんのほうが勝つ確率が高いと思いますよ」と付け加えるのも忘れなかったらしい。
妻がどれだけ怒っているか想像できなかった
おまけに、夫の不倫を告発する文書を勤務先の会社に内容証明郵便で送りつけておいたことが功を奏したのか、夫は子会社に出向させられた。不倫相手も会社に居づらくなったのか、退社することになった。
収入が激減したこともあって、夫はMさんが要求した額の慰謝料を払うことを最初は拒否していた。だが、裁判になったら困るという計算が働いたのか、渋々ながら離婚に応じた。慰謝料は分割払いで、支払いが滞ったら、給料を差し押さえるということで合意した。結局、夫の「謝れば許してもらえる」という甘い認識は木っ端みじんに吹っ飛んだのである。
Mさんの夫が40歳を過ぎても「謝れば許してもらえる」という甘い認識を持ち続けていたのは、妻の反応に無頓着で、妻がどれだけ怒っているかに考えが及ばなかったからだろう。いや、むしろ目を向けようともせず、部下の若い女性との不倫に溺れていたのかもしれない。