壮絶ないじめにあった男性(現在61歳)は高2で中退後、ひきこもりがちに。それでも両親に見守られ精神的に安定した40代には清掃業を始め収入を得ていた。ところが、母は病死し、父は要介護状態に。男性は仕事を辞め、人手を借りずに100%自力で自宅介護。父親亡き後、重度のうつに陥ってしまった――。
うつ病の若者が両手に顔を持って椅子に座っている
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仕事を辞め父親の介護に専念…父他界後はうつ状態に

後藤裕さん(仮名・61歳)は、2年前まで80代の父親と二人暮らしをしていた。重度の要介護状態の父親を献身的に介護したが、2年前に他界すると、今度は自分が重度のうつ状態に陥った。家から出られず、食事もまともに取れない状況で、父親が亡くなってから20キロ近くも体重が減ってしまった。

「父親が遺してくれた貯蓄だけでは、自分は生きていけない。だから、死ぬしかないんだ」

後藤さんはずっとそう感じていたという。

大変ながらも、父親の介護が後藤さんの生きる意味になっていたため、父親が亡くなったことが後藤さんをうつ状態に追い詰めたわけだが、心配した近所の人たちの連携で後藤さんは支援団体とつながることができた。

[家族構成]
後藤裕さん(仮名・61歳)
兄弟姉妹はなし

[収入と資産の状況]
収入:0円
年金:年間約80万円(65歳からもらえる予定)
貯蓄:約700万円(父親が遺した分)

いじめが原因で高校を中退、断続的にひきこもる

後藤さんは高校時代にいじめを受けて、高2の夏休み明けに中退した。その後はひきこもったり、短期のアルバイトをしたりを繰り返してきた。高校時代のいじめでは、自殺未遂をするほど追い詰められてしまったため、ひきこもっている時期も父母は働くことを強要したりはしなかった。

母親は、後藤さんが40代の時に病気で他界。その後は父親と二人暮らしを続けてきた。父子二人の暮らしは穏やかな時間が流れ、精神的に落ち着いてきた後藤さんは、15年前に清掃を請け負う会社で契約社員として働き始めた。人とあまり関わらず、自分のペースで仕事ができる清掃の仕事は、後藤さんの性格に向いていた。元来、まじめな性格であるため、会社では仕事ぶりを認めてもらい、後藤さん自身も「65歳くらいまで、今の会社で働きたい」と思えるようになっていた。