明確なガイドラインをもとに制作された「適正AV以外のアダルトビデオ」を指す「同人AV」。出演する女優の働き方はどうなっているか。ノンフィクションライターの中村淳彦さんは「32歳の子育て中の主婦は、結婚後も夫公認で『月2回の同人AV出演』を続けている。『子育てと両立できてすごくいい』というのが続ける理由」という――。

※本稿は、中村淳彦『同人AV女優 貧困女子とアダルト格差』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

台所での料理
写真=iStock.com/monzenmachi
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同人AV月2回、撮影会モデル月2回で月収20万円

池袋で待ち合わせた同人AV女優・平塚里奈(仮名、32歳)は、子育て中の主婦だった。

埼玉県某市の分譲マンションでサラリーマンの夫と子どもと3人暮らし。土曜日なので、子どもの面倒は夫が見ている。今日は「同人AVの取材」と夫に伝えて家を出たという。

平塚里奈は黒髪の美人ママという風貌だった。宮﨑あおいに似てなくもない。

池袋北口駅前に老舗喫茶店がある。平塚里奈とは喫茶店の前で待ち合わせた。

筆者よりもほんの少し早く到着した彼女は、さっそく気持ち悪い中年男性に「あなた遊べる人?」と声をかけられていた。彼女が丁重に断ると、気持ち悪い中年男性は舌打ちして離れていった。

階段を昇って喫茶店内に入ると、ヤクザ風、輩風、パパ活顔合わせ、マルチビジネスの面談、中国人など、普通の人はあまりいなかった。注文をしてから、普段は育児をする平塚里奈に同人AVに出る理由を聞いていく。

結婚したのは3年前、出来ちゃった婚でした。夫との出会いは歌舞伎町でのナンパ。一緒に飲みに行って付き合うようになった。
当時、店舗型風俗で働いていたので東新宿に住んでいたんです。そのときは、もっと飲みたい気分だったし、歩いて帰れるからナンパに応じました。

2022年6月まで同人AVだけではなく、風俗嬢と撮影会モデルもやっていた。出産後も子どもを保育園に預け、平日に風俗出勤した。

しかし、だんだんと母親の自覚が生まれ、いまは同人AVに出演するのは夫が家にいる土日だけにしている。出演依頼のあった撮影者に土日限定で撮影を組んでもらっている。

夫の収入は400万円台、本当に普通の人。ただ、子どもがまだ2歳なので、そんなに無理して働かなくてもいいかなって思うようになった。
いまは風俗の仕事は辞めて、同人AV月2回、撮影会モデル月2回みたいな感じ。同人AVも撮影会モデルも、1日5万円にはなるので、月収は20万円くらい。