絶叫しながら中年男性に追いかけられる

通った高校は真面目な進学校、大学でもスポーツ系サークルに所属したので真面目な友達が多かった。出会い系サイトや出会いカフェは、誰に聞くでもなく「高収入」と検索して自分で見つけた。

高収入バイトとか裏バイトを検索しました。彼氏には飲食店のバイトって嘘を言って出会いカフェに行って、結局3万円で本番もした。
食事だけだと5000円、たまに1万円くれる人がいた。本番したいって人も、食事だけっていう人も土日が多かった。
でも10年くらい前に、池袋で女子大生が男性客に殺される事件が起こってこわくなった。事件がキッカケで出会いカフェはやめました。

2010年9月に起こった池袋出会いカフェ殺人事件のことである。当時、現役女子大生だった平塚里奈は、同じ時期に同じ出会いカフェを利用していた。

事件は実名報道されて殺された女子大生が、「売春婦!」とネット上で非難されているのを見て、出会いカフェ通いをやめている。

事件が起こった時期、池袋の出会い喫茶で中年男性に追いかけられたことがあった。それも重なってこわくなりました。
そのときは中年男性に「カラオケに行こう」って誘われて外出したけど、ラブホテルに引きずり込まれそうになって逃げた。
中年男性は絶叫しながら追いかけて来て交番に駆け込んだ。その直後に事件があったので、本当にこわいと思いました。
走る男性
写真=iStock.com/FilippoBacci
※写真はイメージです

単体デビューを断って企画単体でスタート

大学1年のとき、出会いカフェで月20~40万円は稼いだ。次の仕事を探そうというとき、とても普通の時給で仕事をする気にはなれなかった。

キャバクラで働こうと、ふたたび高収入の仕事を検索したとき、AV女優のプロダクションの求人広告を見つける。

AV女優募集ってプロダクションの求人があった。大学生だったけど、専門学校にも行きたいし、卒業したら奨学金の返済もあるし、何となくお金欲しいなみたいな意識でした。
最初に入ったプロダクションは、AVの前にイメージビデオでデビューさせるって言っていました。最初にグラビアをやって、元グラビアモデルがデビューみたいなはく付けをしたいって。

こうして2012年、大手プロダクションに所属した。

最初の面接のときに単体デビューを打診されたが、結果的に断っている。

11年前はAV業界の本格的な斜陽が始まった時期であり、それまではプロダクションから言われるまま動いていれば単体デビューも何とかなった。

しかし、本人にやる気がないととても単体デビューは務まらない時代に突入していく。

たぶん単体で売り出そうとプロダクションはしていたけど、私はそこまでAV女優をやりたいって意識がなかった。
プロダクションに入るときも、メーカー面接のときも、「どうしてAV女優になりたいの」とか、「どんな女優になりたいの」ってすごく聞かれたけど、うまく答えられなかった。
結局、単体は無理って判断された感じです。だから企画単体からの始まりでした。

企画単体、企画の出演料はセックス(絡み)の回数で金額が上下する。平塚里奈は2絡み12万円、1絡み8万円だったという。

AV業界は思ったよりは優しい世界でした。最初、プロダクションに対してこわいイメージがあったけど、普通の会社みたいな感じでした。
撮影は毎回いろんな設定があって、衣装とかヘアメイクとか楽しかった。仕事をしたのは多くて月5本程度。大学生だし、実家暮らしだし、それくらいで十分でした。

彼女が所属した大手プロダクションは、筆者も何度も行ったことがある。雰囲気がよく、女優も活き活きとしていた。

しかし、出演強要の摘発ラッシュのときに社長が逮捕され、いまは消滅している。