※本稿は、中村淳彦『歌舞伎町と貧困女子』(宝島社)の一部を再編集したものです。
試しに立ったら、5秒で声がかかった
マスクをとった星野恵梨香は美人だった。
口調や人当たりも明るく、どう眺めても普通の一般的な女の子である。神奈川県で実家暮らしの25歳、仕事は非正規の倉庫作業をしている。2022年7月末から大久保病院前で街娼をしているという。
「キッカケはTOHOシネマズの前に、そういう女のコを探しているオジサンたちがいるって知ったから」
違法行為をしている街娼との会話は苦戦を強いられるが、星野恵梨香は一瞬で事情を察してくれて普通に語ってくる。
「(TOHOシネマズに上る)エスカレーター前に雨宿りできるような所があるじゃないですか。そこに立った。お金が欲しかった。そのときオジサンに声をかけられて、条件いくら? って。今日は時間ないから行けないけど、他にオジサンが集まるスポットがあるって大久保病院前を教えてもらって、連れて行かれた。そしたらホントに女の子がたくさん立っていた。オジサンもいっぱいいた」
星野恵梨香はオジサンに言われたとおり、病院前に試しに立った。中年男性から5秒で声がかかった。2万円という条件を言うと、相手はうなずいたのですぐに近くのラブホテルに行った。それが初めての売春行為だった。
それから時間を見つけては、大久保病院前に行って街娼をするようになった。
「月30万~50万円くらい欲しい」その理由は…
「お金が欲しい理由はホストに行きたいから。シンプルにお金を稼ぎたい。私はそんなにボンと使うタイプじゃなくて、飲むのが好きだから回数会いに行きたい。だから一度に使うのは5万円とか、それくらい。週2回は行きたい。だから月30万~50万円くらい欲しい。そのお金を稼ぐために立っている」
どうも、大久保病院前に立っている女の子たちのほとんどはホス狂いのようだ。
星野恵梨香は、担当に恋愛をして入れ上げるタイプではなく、ホストクラブで遊ぶのが楽しくて趣味になっているようだった。どうしてホストクラブに行くようになったのか。
「5月に女友だちと歌舞伎町に3人で行った。そのときキャッチから声をかけられて、ホストどう? って。最初は断った。でも楽しいよって言われて、お酒を飲めるし、安くいけるからって行った。それで、私だけハマっちゃった。お酒を飲むのがすごく好きで、それにカッコイイ人とお酒を飲めるのが楽しい。最高に楽しいと思ったので通っています」
イケメンとお酒が好きなので担当はコロコロ変わる。
「イケメンがいい。ついた担当と飲むのが楽しい。ホストってカッコイイし、話も上手で、ノリいいし話も聞いてくれる。それなら普通のバーに行けよって言われるけど、ホストってやっぱ違う。やっぱカッコイイ人と飲むお酒って特別おいしい。たぶん女の子にしかわからないけど、男の人がめちゃくちゃかわいい女のコと飲むお酒がおいしいのと一緒だよ」